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アシックス 温室効果ガス排出量最少スニーカーでスポーツ用品業界のサスティナブルを加速

日本のスポーツブランドを牽引するアシックスは、サステナビリティを追求した製品も世に送り出しています。

今回はそんなアシックスのシューズから「GEL-KAYANO 30」と「GEL-LYTE III CM 1.95」をご紹介します。

サスティナブルを追求しながら品質を落とさないアシックスのシューズ。

その魅力を株式会社アシックス 広報部日本地域広報チームの今村玲奈さんにお伺いしました。

目次

シリーズ30周年を迎える「GEL-KAYANO 30」のサステナブルな革新

――「GEL-KAYANO」シリーズはこれまで高い安定性とクッション性から、長距離ランナーやプロのアスリートから日常のジョギングを楽しむランナーまで、多くの人々に支持されてきていると思います。30周年を迎え、この取り組みを開始するきっかけとなった出来事やインスピレーションは何でしょうか?

アシックスは、スポーツを通じた心身の健康の実現を目指していて、そのためには運動し続けることのできるすこやかな地球環境が必要だと考えています。そのすこやかな地球環境実現のために、 お客様と一緒に環境負荷を低減する取り組みを進めることが重要です。また、ランナーを対象とした自社調査によって、製品のCO2排出量の表示の要望やCO2排出量が表示された製品の購入意向が高まっていることがわかりました。


GEL-KAYANOの最新作であるGEL-KAYANO 30

そこで、アシックスの代表的なランニングシューズであるGEL-KAYANOの最新作であるGEL-KAYANO 30から、製品ライフサイクルで排出される温室効果ガス排出量(カーボンフットプリント)を表⽰する取り組みを行い、透明性を向上し、体を動かし続けられるすこやかな未来をお客様と一緒に目指すために、カーボンフットプリント表示の取り組みをスタートしました。


GEL-KAYANO 30はカーボンフットプリント表示によって体を動かし続けられるすこやかな未来を目指す

――「GEL-KAYANO30」が業界平均より14%もCO2排出量が少ないのは、どのような技術や材料の変更によるものでしょうか?

大きくは2つあります。1つは、アッパー(甲被)でのリサイクル材の採用で、主素材であるアッパーのメッシュ材にはペットボトル由来の100%リサイクルポリエステルを採用しています。もう1つはミッドソールでの植物由来の素材の採用で、これらによりCO2排出量の削減に貢献しています。


GEL-KAYANO 30のカラーバリエーションは8種類

――「GEL-KAYANO 30」の開発過程で直面した最大の挑戦や難しさは何でしょうか?

GEL-KAYANOシリーズは機能性の高さからお客様に信頼いただいてきたシリーズです。その機能性を向上させながら、同時にCO2排出量の削減も行うということはこれまで以上のバランス感覚を必要としました。複数のプロトタイプを試作して機能性の評価を行うとともに、リサイクルポリエステルや植物由来の素材といった環境配慮材をどれだけ採用できるか、その両者のバランスを取ることは非常に難しいことの1つでした。

参考:アシックス公式 GEL-KAYANO 30 – 途切れない安定感。最後まで続く信頼感

アシックスと「GEL-LYTE III CM 1.95」 -サステナブルの新境地へ

――「GEL-LYTE III CM 1.95」の開発の背景や経緯について教えてください。何がこの長期的な取り組みのキッカケとなったのでしょうか?また、どのようなコンセプトや思いを大切にされましたか?

私たちのミッションはスポーツを通じて人々の心身の健康を実現することです。スポーツは気候変動の影響を大きく受ける分野であり、私たちは将来世代がスポーツを続けられる環境を守るため、2050年温室効果ガス排出量実質ゼロを目標に掲げ、取り組んでいます。

この目標を達成するためにはイノベーションが必要であり、研究部門とプロジェクト化を呼びかけました。品質とサステナビリティを両立させるイノベーションを起こすことで、業界にインパクトを与え、生活者が妥協しない環境配慮製品を選択できる社会を推進したいと考えたためです。

当社は、約10年前にフットウェア業界で初めてマサチューセッツ工科大学と製品の環境負荷の測定および削減方法に関する共同研究を行っており、今回のスニーカーではこの共同研究で得た知見を活用・改善しています。

製品を開発するうえで、サステナビリティを実現するだけでなく、アシックスが求める品質に決して妥協せずに、品質やデザイン性とサステナビリティを両立することを重要視しました。


GEL-LYTE III CM 1.95はCO2eの排出量を1.95kgに抑えています

――「GEL-LYTE III CM 1.95」で特筆すべきCO2排出量の削減を達成するための最も挑戦的だった要素は何でしたか?

「アシックスの定める品質を保ちながら、市場で最少となるCO2排出量を実現したこと」です。 当社はお客様に高品質な製品をお届けするために自社独自の製品基準を設けていますが、その基準を満たしながらCO2排出量を削減することに特に苦労しました。

具体的には、従来品から品質を落とさない低環境負荷原料(リサイクルペットボトル)や低環境負荷技術(ソリューションダイ)を採用。品質担保のために新規素材を開発し(カーボン・ネガティブ・フォーム)、必要となる部材についてはロスが最小限となるよう(テープでの補強、互い違いに裁断できる裏材)工夫しました。

――「GEL-LYTE III CM 1.95」開発中に直面した最大の挑戦や難しさは何でしょうか?

適材適所の考えを改めることに苦戦しました。 CO2を意識した商品を作成すること、それはシューズの部品構成を少なく、軽くすることに繋がります。さらに意識しないといけないことは、裁断ロスになる重量も1足の重量に含まれてくるということです。普段の開発で、足のホールド性や保形を保つために使用していた材料や形状が、そのまま応用できませんでした。材料選定では軽く、CO2排出量が少ないものを意識して選びました。

裁断では、普段はコスト算出で使用するマッピング図を活用し、できる限りロスの少ない形状、配置の検討を何度も繰り返しました。手で切り出した紙のパーツを実際にマッピングソフトで配置を確認し、試行錯誤を繰り返しました。多くの専門部署のサポートにより、CO2排出量の少ない材料、最小限のパーツ構成で、最小限のロスに抑え、製品の品質を落とさない、そんな手法を見つけることができました。

アッパー(甲被)の裏材を互い違いに裁断できる手法も、このような議論の中で生まれました。「開発」という垣根を超えて、多くのメンバーのアイデア、お互いの専門スキルをぶつけ合うことで生まれた成果だと考えています。


GEL-LYTE III CM 1.95は試行錯誤を繰り返したことで、製品の品質を落とさずCO2排出量を最小限に抑えることに成功している

――カーボン・ネガティブ・フォームやリサイクルポリエステルなどの使用を決定する際の課題や反応について教えてください。

カーボン・ネガティブ・フォームは複数のバイオベースを使用しており、そのひとつはBio-EVAです。通常、Bio-EVA使用するとフォームが硬くなってしまうのが課題でしたが、フォーム材の軟質化のためにスチレン系熱可塑性ポリマーを採用し、複数の原料を混ぜ合わせることにより、サステナブルでありながら、品質を担保したフォーム材を創ることができました。

――「GEL-LYTE III CM 1.95」のような商品を開発する過程で得た学びや知見を、他の製品や新しいプロジェクトにどのように応用していく予定ですか?

今回のGEL-LYTE III CM 1.95の開発で得られた知見はパフォーマンスランニングシューズを含めて他の製品にも展開していきます。今年の7月に発売されたGEL-KAYANO 30から製品のCO2排出量の開示をスタートしたこともそうした取り組みの一環です。

参考:アシックス公式 GEL-LYTE III CM 1.95

アシックスが目指す持続可能な未来

――サステナビリティと商品の品質や性能を両立させるのは簡単なことではないと思います。それを乗り越えるためにアシックスが掲げる想いや工夫などございましたらお教えください。

機能性・品質とサステナビリティを両立することは非常に難しく、かつとても重要です。両方を妥協せずに追い求めることで、イノベーションが起こると考えています。

当社では、スポーツ工学研究所を中心としたヒューマンセントリックデザインによる自社での材料設計が可能です。これに加え、材料や製造、輸送、使用、廃棄など商品ライフサイクルのCO2排出量を精度良く算出する知見を有しています。 これらの知的技術により、機能性・品質と環境面の両面を考慮しての設計が可能となります。

また、サステナビリティは全社のVISION・中期経営計画の柱であり、全社一丸となって取り組んでいます。例えばGEL-LYTE Ⅲ CM1.95のプロジェクトでは、サステナビリティ・開発・デザイン・研究・生産・SCM・マーケティングなど、多くの部門が協力し、品質に妥協せずCO2排出量を低くするため、それぞれが意見を出し合い議論した結果、バイオ由来材を活用した「カーボン・ネガティブ・フォーム」の開発や、パーツ数の削減や構造の工夫など、16もの削減施策を行い、アシックスの求める品質基準をクリアしながら、1.95kgという数値を実現しました。


株式会社アシックス 広報部日本地域広報チーム 今村玲奈さん

――スポーツ用品業界全体でのCO2排出量表示の普及や標準化に向けて、アシックスはどのような役割を担っていきたいと考えていますでしょうか?

スポーツ用品業界全体で、気候変動・CO2削減へのアクションは加速しています。当社が約10年前に行ったマサチューセッツ工科大学との製品のCO2排出量に関する共同研究における計算手法は、現在、業界のスタンダードとなっています。今回の計算手法についても、認証を取得し、web上で公開しているため、自社内に限らず業界全体で継続的に排出量を把握して削減できるようになります。今後も、製品のCO2排出量やその計算手法を透明性高く開示することで、業界をリードし、業界全体で取り組みを加速させていきたいと考えています。

――「GEL-LYTE Ⅲ CM1.95」「GEL-KAYANO 30」経験を活かして、次世代の製品開発に向けてのアシックスの考えや取り組みを教えてください。

「GEL-LYTE Ⅲ CM1.95」の16の削減施策は今後より広い製品に活用することができ、製品の温室効果ガス排出量の削減につなげることができると考えています。また、 排出量の可視化を通じて計算手法の精度を高めて確立させたことにより、シューズ・アパレルなど当社の幅広い製品の温室効果ガス排出量の把握が自社内でできるようになりました。排出量の算出を通じて、削減のポイントがどこにあるのかを確認することで、次の製品の温室効果ガス排出量の削減を発展させることができます。

参考:株式会社アシックス サステナビリティ

今村玲奈(いまむら れな)
株式会社アシックス 広報部日本地域広報チーム
当チームでは、日本国内の商品やサービス、事業に関する情報発信を行う。
サステナビリティ、スポーツスタイル、トレーニング、事業関連などのカテゴリーを担当。
2011年入社。経理財務統括部を経て2013年4月広報部に異動。現在に至る。

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