buøyブランドオーナーの田所沙弓さん。
前回に続き、プラスチックメーカーのテクノラボが作る海洋ごみ100%のプラ工芸品「buøy(ブイ)」について、林社長とbuøyブランドオーナーの田所さんに、プラごみの地産地消を目指して進めているプロジェクトと、それを含めたラインアップ拡張など今後の展開を聞いた。
地域ごとに特色あるブイを作り“ごみの地産地消”を目指す
――地域ごとに漂流してくるごみに違いはありますか。
地域によって漂着してくるごみはバラバラです。例えば、長崎の対馬半島にごみ拾いに行ったことがあるのですが、そこには中国から流れてくるペットボトルや洗剤のボトル、大きいものだと風呂桶やコンテナケース、パレットなどが多いです。ほかには、漁具関係も多いですね。浮き輪とか網など。漁具関係は嵐で流されちゃうことがあるみたいです。
一方、関東だとコンビニの袋とか食品の梱包容器、ペットボトルとかが多いですね。海に遊びに来た子供が忘れていってしまったおもちゃなどもあります。
こういった地域ごとの漂着ごみにも特色が出るので、その地域のごみだけを使ったブイを作り、“ごみの地産地消”ができないかと考えています。
原料となる海洋プラごみ。
――ごみの地産地消ですか。
はい。海洋ごみは中国から流れてくるものが世界中で見てもかなりの量を占めます。日本にも当然流れてきますが、中国に近いところ、つまり都市部ではなく地方に多く漂着します。地方は、高齢化や過疎化が進んでおり、海岸のごみ拾いや清掃活動を継続的に行っていくのは難しい側面があります。
そこで、我々がブイの技術提供を行って、その地域に住むデザイナーや町工場などと協力し、その地域のごみを使ったブイを作る。すると、それが産業になり地産地消に繋がるのでは、と考えています。今まで処分費用がかかっていたごみが、ブイを作れば資源に変わる。プラスチックごみに困っている地域をほかの地域に暮らす人々が継続的に支援できる仕組みを作って全国展開していければと考えています。
ごみの地産地消プロジェクト。
――実際に進んでいるものはありますか。
少しずつですが、さまざまな地域と連携を始めています。例えば、福井県で海洋ごみなどの再資源化を目指して活動している団体「anomiana」の、「ギザギザ湾・美化計画」に協力しています。若狭湾で回収された海洋ゴミを送って頂き、それでブイを作るなど、実地での検証に挑戦しています。先日の輸送時には、課題研究で海洋プラについて研究している、若狭高校海洋科学科2年生にも洗浄を手伝ってもらったりしました。海洋ゴミを資源化するには、通常のプラスチック製品の製造より多くのプロセスを有します。このように地域で海洋ごみをなんとかしたいと思っている方々と今後も連携を続けていきたいです。
参考:ギザギザ湾美化美化計画 anomiana
新たな海洋プラの資源化として、ブイにブランド力を
――今後、商品ラインアップを増やすなどの計画はありますか。
現在、ブイは「トレイL」「トレイM」「トレイS」「コースター」の4種類のラインアップがあり、今後も増やしていく予定です。インテリアポットや時計、ランプシェードなどインテリア用の製品を増やしていきたいです。当社のプラスチックメーカーとしての強みを活かしてさまざまな形に挑戦していきたいですね。
ほかにも、色のバリエーションを増やしていきたいです。ブイの特徴である鮮やかな色に注目して、例えば、秋に紅葉バージョンや、冬にクリスマスバージョンなど季節によって期間限定の商品を作っても面白いかなと思います。
ブイにはさまざまな模様がある。
とにかく、消費者に受け入れられるようなブイのブランド力を高めるために商品開発を継続していきたいです。また、7月にブイをリリースしたのですが、引き合いがかなり増えてきたので埼玉にある工場と協力して生産量も増やしていきます。
――海洋ごみの問題について。
海洋プラ問題が世界中で考えられるようになったきっかけに、中国が廃プラの輸入を禁止したことがあります。中国の経済成長を背景に、先進諸国は約20年にわたってプラごみを中国に輸出し続けました。そのせいで、日本国内のプラスチックリサイクラーは倒産が相次ぎ、リサイクル技術は発展してきませんでした。
そして今、中国の廃プラ輸入禁止に伴い世界中でリサイクルせざるを得なくなりました。各国が今までないがしろにしてきた海洋プラの問題も本気で取り組まなきゃいけない状況になっています。
ただ、今後はインドの経済成長も控えています。インドが中国のようにプラスチックを大量に輸入し始めるかもしれない。すると、中国の時と同じでさらに海が汚染されたり海洋ごみの問題を先送りしたりすることになりかねない。だからこそ、今の間に何かしらのプラのリサイクル方法や問題解決に向けてそれぞれ企業や個人が動き出さなきゃいけないと切に思います。
バージン材で作るプラスチックのマーケットは数多くありますが、海洋プラなどの廃プラで作る製品のマーケットはほとんどありません。そこで、我々がブイのような再生プラの製品でも、マーケットは成り立つんだということを先陣切ってやりたいですね。そうすれば後から参入する会社や個人が増えてくると信じていますから。
buøy公式ホームページ:http://www.techno-labo.com/rebirth/
buøyオンラインショップ:https://buoy.stores.jp/
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