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修理する権利とは?欧州や米国で共感される主張にAppleも対応か

もし使っていた電化製品が壊れてしまったら、多くの人は「メーカーへ修理に出す」「新しい製品に買い替える」と考えるかもしれませんが、私たちには所有するものを「修理する」という選択肢があるのではないしょうか。

「修理する権利」の重要性が叫ばれる欧米では、修理することに対し多くの共感や反響があり、今の日本では根付いていない価値観が生まれつつあります。

修理する権利の重要性とは、どういったものなのでしょうか。修理する権利と欧米の反応などをご紹介します。

目次

欧米で話題の「修理する権利」とは

もし、家電製品などが壊れてしまったら「買い替えを考える」「メーカーへ修理に出す」と考えるのが自然かもしれませんが…修理することも1つの方法ではないでしょうか。

自分で修理できれば、修理代を節約できるだけでなく、ゴミを出す機会を減らして資源を無駄にしないことにもつながり、一石二鳥だと考えられます。

ただ修理するにも、マニュアルがないものを触るのは不安ですし、中には「デバイスを開かないでください」といったメッセージが記載されている場合もあります。

そのため、自ら修理することは躊躇う人も多いでしょう。部品やマニュアルが容易に手に入れば、消費者が自ら修理することも可能かもしれませんが、メーカー側が消費者による修理を拒んでいることがほとんどです。

そんな状況に対し、欧米では近年「修理する権利」が強く主張されています。

修理する権利とは、自らが購入したモノをどうするかは所有者の自由であり、それは修理やカスタマイズすることも当然であるというものです。

具体的には、自分で修理するか修理サービスに依頼する、メーカーが使用するマニュアルへのアクセス、ソフトウェアのロックを解除する、などの行為は消費者にとって当然の権利である、ということです。

多くの人の共感を呼びつつあるこの主張は「修理する権利」を求める運動として広がりを見せています。

「修理する権利」に対してメーカー側は

消費者が製品を自ら修理することに対し、メーカーは強い反発を示しています。

例えば、多くの人が使うスマートフォン、iPhoneで有名なApple社は消費者による修理を徹底的に避けるような動きを見せていました。

消費者がiPhoneを開いて中を見ることがないように特殊なネジを使用する、非正規店でバッテリー交換すると警告が出る、自社の修理サポートが充実していることをアピールするなど、消費者による修理や修理サービスへ依頼する行為を拒む動きを見せていました。

また、メーカーによっては修理の可能性を考慮されていない製品を出す場合もあります。

そこまでしてメーカーが消費者による修理を拒む理由として、以下のようなものが挙げられています。

  • マニュアルを公開してしまったら技術漏洩につながってしまう。
  • 知識のない消費者が修理することで製品がさらに壊れる恐れがある。
  • 修理中に危険な挙動が発生することで消費者の安全を確保できない。

しかし、このようなメーカーの動きに「修理の独占である」という声もあります。もし修理店が一つだけならば、価格は上がり、クオリティが低くなる恐れもあるからです。

欧米に見る「修理する権利」の高まり

欧米では「修理する権利」を求める運動が広がっています。

この運動に共感する人々により「修理する権利」に関する法律が求められ、多くの人がデモに参加するなど、盛り上がりを見せているのです。

この運動が活発になったきっかけは2012年、アメリカのマサチューセッツ州で、自動車を修理するための情報をメーカー側が修理技師やオーナーに公開しなくてはならない法律が立法化されたことでした。

これに対し、消費者向け電化製品にも同様の法律を求める声が大きくなっていったのです。

アメリカでは、2019年9月の時点で20の州が修理する権利に関する法律を制定。

欧州委員会も修理する権利に関する案が「循環経済行動計画」の一環として採択されました。

さらに、2021年4月にはEUで照明器具、洗濯機、冷蔵庫などを対象に、修理しやすい製品の生産をメーカーに義務づける法律が発効され、簡単な問題であれば消費者でも対応できるようメーカー側は部品の保有期間を7年まで延長し、修理技師には修理マニュアルも提供することになります。

この法律の誕生は、修理する権利を求める人々にとって、大きな前進となりました。これからは対象製品の拡大と、マニュアルを修理技師だけでなく消費者にも公開されることが求められることになります。

「修理する権利」に歩み寄るメーカー!日本では?

この状況に、各メーカーも歩み寄りを見せつつあります。

Apple社は修理プログラムの拡大を決定。今後は独立系の修理事業者に正規サービスプロバイダと同じツールやマニュアルや提供されることになりました。つまり、アメリカではiPhoneが壊れてしまっても、独立系の修理業者に簡単に直してもらえるのです。

サムスン電子も利用できる「メーカー認定」の修理事業者の数を増やすことで歩み寄りを見せましたが、消費者にとっては選択肢の主導権はメーカーが握ったままです。

このように、モノの価値観やリサイクルについて大きな変化をもたらす「修理する権利」ですが、日本ではこのような動きはまだ見られません。

スマートフォンの修理を例にすると、iPhoneには技適マークの関係で消費者が修理した場合、違反になる恐れがあります。

技適マークとは「技術基準適合証明」のことで、スマートフォン、Wi-Fiルータなど無線通信機器には電波法の基準に適合している証明として、このマークがついています。

そのため、もし個人や認定を受けていない業者によって修理した場合は、この技適マークを外さなければなりません。

しかし、iPhoneはソフトウェア上に技適マークがあり取り外すことができず、仮に取り外せたとしても、技適マークがない通信機器で電波を利用する行為は違法行為となるのです。

日本ではあまり耳にしない修理する権利ですが、アメリカや欧州の動きを見ると、広く知られる日がやってくるのも、遠くはないかもしれません。

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