太田祐一撮影 転載禁止
環境省は、7月8日に「令和2年度廃プラスチックの輸出に係るバーゼル法該非判断基準策定のための検討会(第2回)」をオンライン上で開催した。本検討会では、環境省から出された「廃プラスチックの輸出に係るバーゼル法該非判断基準(案)」に対して、プラスチックリサイクルの専門家である各委員らが意見交換を行った。
バーゼル法に「廃プラスチック」が規制対象となった背景や目的は?
発端は、中国が2017年末に廃プラの輸入を禁止したことにある。その結果、代替国として東南アジアなどへの輸出が増加し、そこで不適切にリサイクル処理され環境汚染を引き起こしてしまった。そうした中、東南アジアなどでも廃プラの輸入規制が実施された。
6月10日に開かれた第1回の検討会では、不適切処理の具体例が紹介された。例えばベトナムでは、物流、梱包用途のフィルム状の廃プラ(PE)が家内工業型の施設でリサイクルされ、汚れ洗浄時の排水が未処理のまま放流されているという。
ほかにも、マレーシアのセランゴール州クラン港で、日本から輸出された廃プラがリサイクルに適さないと判断され、日本へのシップバックが計画されているという報告もあった。
こうした問題を解決するために、昨年スイス・ジュネーブで開催されたバーゼル条約の第14回締約国会議において、「廃プラスチック」を新たに条約の規制対象に追加する条約附属書改正が決議された。
バーゼル条約附属書の改正により、「廃プラ」に関する規定を付属書Ⅱ、附属書Ⅷ、附属書Ⅸに追加した。そのうち附属書Ⅸは「非有害な廃プラスチック」が追加されており、これは規制対象外で今まで通り輸出が可能。
一方、附属書Ⅱの「特別の考慮が必要な廃プラスチック」、附属書Ⅷの「有害な廃プラスチック」は規制対象になる。なお、規制対象になっても相手国の同意があれば輸出は可能で、輸出禁止措置ではない。
今回の検討会では、「規制対象」となる附属書Ⅱと、「規制対象外」になる附属書Ⅸの境界線を判断するための具体的な基準作りを目的としている。
廃プラスチックの輸出に係るバーゼル法該非判断基準(案)の説明
今回、環境省から提出された「廃プラスチックの輸出に係るバーゼル法該非判断基準(案)」は、「複数のプラスチック樹脂の混合がないもの」と、「複数のプラスチック樹脂(PE、PP、PET)の混合があるもの」に分けて規定している。
複数のプラスチック樹脂の混合がないもの
出典:環境省 報道発表資料(https://www.env.go.jp/press/files/jp/114242.pdf)
同判断基準では、下記のA-Dの条件に全て合致するものは、附属書Ⅸに該当し「規制対象外」としている。
- A:飲食物、泥、油などの汚れが付着していないこと
- B:プラスチック以外の異物が混入していないこと
- C:単一のプラスチック樹脂で構成されていること
- D:リサイクル材料として加工・調整されていること
A-Dの条件はいずれも外見から判断できることが必要だ。
具体的な例として、「①ペレット状のプラスチック」「②フレーク状又はフラフ状かつ、ほとんど無色透明または単一色のプラスチック」「③製品の製造工程から排出されるシート状またはロール状のプラスチック」「④インゴット上の発砲ポリスチレン(PS)」だ。
②に関しては、選別の過程でほかのプラスチック樹脂が多少混ざることは避けがたいため、選別工程を経ていることが外見上明らかであるなら、若干の混合は認めるとしている。
また、製品の製造工程から排出するフレークやフラフ状のプラスチックであれば、ミックスカラーでも「規制対象外」となる。
ベール品は、製品の製造工程から排出されたもので、汚れや異物の混入がなく、外側を透明なフィルムで覆い、内容物が均質であれば、「規制対象外」になるとしている。
出典:環境省 報道発表資料(https://www.env.go.jp/press/files/jp/114242.pdf)
出典:環境省 報道発表資料(https://www.env.go.jp/press/files/jp/114242.pdf)
複数のプラスチック樹脂(PE、PP、PET)の混合があるものの該非判断基準
同判断基準では、ペットボトルのラベル(PE)、キャップ(PP、PE)、ボトル(PET)の混合物を想定した規定となっている。下記のA-Cの条件に全て合致するものを、附属書Ⅸに該当し「規制対象外」としている。
- A:分別され、ラベル(PE)、キャップ(PP、PE)、ボトル(PET)以外のプラスチック樹脂や異物を含まないこと
- B:洗浄され、飲料や泥などの汚れが付着していないこと
- C:裁断され、フレーク状になっていること
また、国内で生産されているペットボトルのラベルには、PEのほかにポリスチレン(PS)が使用されていることが多く、選別の工程で完全に取り除くことは難しいため、PP、PE、PETのほかに、PSがわずかに混合していても「規制対象外」とすると明記している。
出典:環境省 報道発表資料(https://www.env.go.jp/press/files/jp/114242.pdf)
検討会での委員からの質問や、環境省からの回答
この案に対して委員から様々な質問や意見が出された。ある委員は「製造工程で排出されたものと記載がしてあるが、現場で判断できるのか」と質問。この質問に環境省は「事前相談された際に、どこから排出されたのか確認をとる」と回答した。
ほかに、「世界的にリサイクルの考え方や輸出入などに関して規制が今後変わる可能性がある。その場合を鑑みて、一定期間を過ぎたらこの該非判断基準を見直すというような文面を記載してくれないか」や「文中に製造工程、産業廃棄物、廃棄物などの記載があり、分かりづらいため何か表記を一元化できないか」などの質問が上がったが、環境省はいずれも保留・検討するとした。
また、複数の委員から「東南アジアで不適切処理が発生する理由として異臭などの原因が挙げられるが、『臭気』に対する文面を入れられないか」との要望があったが、環境省は「外見で判断しづらいため、この案の文面に入れることは難しいが、現場で実際に税関職員が参考にするマニュアルに、『異臭に注意するように』といった記載をするように検討する」と答えた。
今後の流れは?
今後は、今回の検討会の意見と7月~8月に実施予定のパブリックコメントでの結果を踏まえ、必要に応じて修正を行った後、決定・公表となる。
実際にバーゼル条約改正附属書が発効されるのは、2021年1月1日からだが、その前に輸出関係者への周知期間を置く予定だ。
参考:環境省 報道発表より https://www.env.go.jp/press/108164.html
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