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環境を守るヒーローの裏側!製作者が語る困難と葛藤とは

ちょっとお茶目なローカルヒーロー、環境戦隊ステレンジャー。

前回の記事でご紹介した彼らですが、なぜ環境問題を取り扱うヒーローとして誕生したのでしょうか。そして、どのような取り組みをしているのでしょうか。

今回は、ステレンジャーを作り上げた、脚本を担当する遊フロンティアの田畑 忍さんと、演出を担当する大道芸人のエディーさんからお話を伺いました。

20年近く、環境問題の啓蒙活動を続けるヒーロー、ステレンジャーの裏側をご紹介します。

目次

環境系ヒーロー「ステレンジャー」の誕生

環境戦隊ステレンジャーは、2001年に東京都の北区で誕生。

当時は、それまでより環境に対する関心が深まり、ゴミの分別を細分化させよう、という風潮があった。

ゴミの分別方法は、地域によってさまざまだが、そのころは都内でも分別方法に差があった。

特に北区は他の区よりも、電池の回収に力を入れ、回収ポストを積極的に設置していたが、回収率は低く担当者は頭を悩ましていたそうだ。

そのとき、北区に住んでいた田畑 忍(以下、田畑)は、北区でイベントに携わる知人から、子供たちにゴミの分別方法を浸透させる方法を相談されることになる。

田畑はイベントやショーの脚本を作っていたため、子供にもわかりやすい、ゴミ分別に関するショーを作れないか、という話だった。

子供にもわかりやすくするためには、どんなスタイルにすべきか、昔話風などさまざまな案が浮かんでは消えた。

しかし、当時から一緒に劇団で活動していたエディーから、ヒーローショーの公演はどうか、と提案があった。

彼らは昭和の戦隊ものを見て育った世代だったことから、とっかかりやすさも手伝い、オリジナルヒーロー、ステレンジャーの企画が進められた。


ゴミの分別方法を説明するステレンジャー。

つまり、ステレンジャーは最初からヒーローショーをやることが目的で作られたのではなく、ゴミ分別を子供に啓蒙するため作られたのだった。

ステレンジャーの環境への取り組み


ステレンジャーの取り組みについて説明する田畑 忍さん。ショーの脚本を担当している。

環境問題を取り扱ったヒーローショーを行うステレンジャーだが、実際はどのような取り組みを行っているのだろうか。

環境啓蒙のためなら全国どこへでも

ステレンジャーは、北は北海道から南は沖縄まで、依頼があればどこでもショーを行う。

普通、ローカルヒーローと言えば、その地域を活性化させるために、地元の特産品のフォルムをしていたり、それを連想させるようなグッズを販売したりする。

しかし、ステレンジャーは地元というバックボーンが見えず、活動も限定されていない。演出担当のエディーは言う。

「普通のローカルヒーローは、自身が所属する市区町村を背負っています。でも、ステレンジャーは地元というものがありません。以前は北区のローカルヒーローと紹介されていました。それは田畑が北区に住んでいたからです。今は足立区のローカルヒーローとして紹介されます。基地が移転するんですよ。ただ田畑が引っ越しただけなんですけどね」

もはやローカルヒーローとは少し違ったジャンルなのかもしれない。ただ、あえて言うならどこのローカルヒーローなのか、と聞かれたら「地元は地球」と答えるそうだ。ある意味、ヒーローらしく、かっこいい回答だ。

低予算でも環境へ熱意があれば


小学校で行われるステレンジャーのショー。

以前、ステレンジャーのホームページを見た、小学校から上演依頼があった。しかし、その小学校は奈良にあり、ステレンジャーの拠点からは離れていた。

東京からの交通費や人件費のことを考えると、奈良にある小学校で上演することは、予算的にはかなり厳しいものがあった。

しかし、ステレンジャーは奈良の小学校でも上演をしたそうだ。なぜなら、その小学校は教育の中に、環境問題を積極的に取り入れていたため、その熱意に応えたい、と思い至ったからだ。

この他にも、予算が少ない児童館や保育園からの依頼は少なくないようだ。

「予算の問題ではありません。児童館や保育園が、環境問題を子供たちに知ってほしい、という熱心な気持ちがあるなら、僕は賛同しますし、それに応えたいと思います」と田畑は語った。

奈良の小学校で上演したことは、ステレンジャーにとって大きな財産になったそうだ。

ショーを見た子供たちから送られてきた感想文は、奈良まで行った甲斐があった、と思わされるものだったのだ。

「その感想文を読んだときは、気持ちの上では、本当にヒーローになったようでした」と彼らは笑った。

ショーで使う電力を太陽光パネルで


ショーで使う電力を太陽光パネルで賄うことを試みた。

2011年3月11日、東日本大震災によって、原子力発電所事故が発生し、多くの人が驚愕した。

これは、エネルギー問題に対し、人々が考えるきっかけとなり、原発反対を掲げる意見もあれば、代替エネルギーの利用を主張する意見もあった。

そこで、ステレンジャーは「だったら、ショーで使うエネルギーを太陽光パネルで賄ってみよう」という考えに至った。

しかし、太陽光発電機を買うには予算が厳しく、企業からの協力が必要となった。

ダメもとでいくつかの企業に電話やメールでアプローチしてみたところ、静岡県浜松市の「株式会社ハマスイ」が協力を了承してくれた。

それから、高さ150センチ、幅が90センチの太陽光パネルを持ち運び、何回かショーで試してみたが、すべての電力を賄えるわけではなく、天気にも左右される部分があり、太陽光発電の難しさを痛感したそうだ。

震災の前、田畑はステレンジャーとは別の仕事で、原発のイベントに呼ばれたことがあり、自分なりに原発について考えたことがあった。

その際、原発の安全性に疑問を持ち、個人的には賛成できない、という気持ちに至った。しかし、太陽光発電を始めとする、代替エネルギーを活用したとしても、今の人間の生活を支え切ることは難しい。

また、田畑は原発について、以下のように語った。

「かつて、仕事で訪れた原発で、その安全性について丁寧に説明を受け、なるほどと納得する部分も多くありましたが、廃棄物の最終処分が決まっていないのに稼働し続けるのはおかしいんじゃないか、そう思い原発については肯定的な意見は持てなくなりました。

そんな中、あの震災が起こり、多くの原発が止まりました。今の生活を支えるため、今度は火力発電に依存し、今や、環境対策に後ろ向きな国として非難される事になりました。

では、自分は、現在の便利で快適な生活をどこまで捨てられるのか。ステレンジャーの怪人はステレンジャーに倒され去り際に『今の生活の便利さや快適さを捨て去らない限り、今この瞬間も地球はどんどん温暖化しているという事をおぼえておけ』と言う捨て台詞を吐くのですが、これは自分自身に対しての問いかけを台詞にしました。

個人で、この大きなテーマに立ち向かうとき、何ができるのだろうか。本当に何かできているのか?と思う事もあります。
同じくステレンジャーの台詞で『僕たちにできることからすこしずつ』と言うキャッチフレーズを口にするのですが、まさにこのセリフが先の怪人の言葉に対する答えだと思っています」

環境問題を扱うステレンジャーの葛藤


舞台演出を担当するエディーさん。普段は大道芸人としても活躍している。

環境問題を扱う上で、活動中にいくつもの葛藤や矛盾を感じたそうだ。

エコ・環境問題イベントの実態

例えば、環境やエコをテーマとしたイベントへの参加だ。

環境問題やエコが重視される昨今では、それをテーマにしたイベントが、大々的に行われることがある。

ステレンジャーも過去に、そういった会場でショーを行ったことがあったが、その裏側を見た田畑は、大きな矛盾を感じることになった。

イベントはエコを全面的に打ち出しているが、裏では多くの廃棄物を排出していたのだ。

このようなイベントは、小学生や中学生も参加することがあり、環境問題やエコについて考えるきっかけになるかもしれない。

それはメリットと言えるが、実際のところ企業は環境について真剣に取り組んでいますという自己弁護や、自社に都合のいいことばかりを宣伝して、実態は、多額の費用を支払って、ゴミを出しているだけ、と考えることもできた。

田畑はこのようなイベントに、ジレンマを強く感じていた。

「さらに、会場で消費しているエネルギーのことも考えると、切りがありませんよ。今ならイベントを開催しなくても、ネットなど別の方法で提示する方法はあるはずです。でも、それを言い出したら、環境イベントでショーをする自分たちの首を絞めることになる」

デリケートな問題をどう扱うか

イベントだけではなく、原発や国の取り組みなど、デリケートな問題をステレンジャーのショーで扱うかどうかも、難しいことだとエディーは語った。

「個人的な考えだと、取り上げたい問題はいっぱいあります。環境問題のもっと深い部分をステレンジャーに語らせたい、という気持ちもあります。さらに、それをショーとして成立させることは、プロだからできると思います。ただ、それを商品として買ってくれるところがあるかと言えば、別の話ですけどね」

ステレンジャーのショーの中で怪人のセリフで「今の生活の便利さや快適さを捨てきらない限り、今この瞬間も地球の温暖化は進んでいるのだぞ」とあるが、環境問題にデリケートな部分が存在するのは、今の快適さを人間が捨てきれないから、ということは間違いない。

ちなみに、ステレンジャーは田畑たちが所属する劇団の公演に登場することもある。

そこでは、かなり大人向けの内容となり、露骨に人間の欲が環境問題と言える怪人へと変化する様子が描かれているそうだ。

子供には絶対に見せられない内容なのだとか…。

響かない活動


新川水辺サポーターに参加するステレンジャー。

埼玉から東京湾へと流れる、荒川の自然を守る取り組み、荒川水辺サポーターにも、ステレンジャーは参加している。

この取り組みでは、ステレンジャーが荒川の川辺で、ゴミ拾いや草むしりを行うものだが、やはりプラスチック製品のゴミはたくさん見つかるそうだ、

プラスチック製品が環境に悪いと言われる前から、川辺で見つかるプラスチックのゴミが、いつか大変なことになるだろう、という予感はあったそうだ。

また、お花見の会場でゴミ拾いや、屋外イベントでゴミ回収を行ったこともあった。

紙製のストローや自然に還る素材のスプーンをお花見会場にやってきた人へ使ってもらおうとアピールをしていた。

他にも、会場で出たゴミをステレンジャーのところに持ってきてくれたら、チップを渡して他のものと交換できる、というイベントも行ったが、あまり効果は見られなかったそうだ。

これらの取り組みの中、環境を大切にしよう、と伝えても、ほとんどの人には響かない、という実感は二人にとって、重い現実だ。

一個人や一団体で、環境問題を解決するには限界がある。企業や国がもっと積極的に実行力のある取り組みを行わなければ、問題解決は難しい、と二人は肩を落とした。

また、政府や企業はSDGsやクールチョイスなど、環境問題に対して取り組む姿勢を見せているが、名前だけが先行している印象を受ける、とも語った。

実際に、SDGsやクールチョイスという言葉を知らない人は多いだろう。

ステレンジャーはそういう言葉をわかりやすく説明するショー、という側面もあるが、電気を付けたままにしない、ゴミはしっかり分別するなど、今まで気を付けてきたことの実践が、SDGsやクールチョイスになる、ということを伝えて行くことも、一つの使命のようだ。

環境問題を伝え続けるヒーロー


環境問題を訴える難しさを説明する田畑さんとエディーさん。明るく穏やかに話をしてくれたが、熱い気持ちも伝わってきた。

ステレンジャーの今後の目標は何か、と質問したところ、まず田畑がこう答えた。

「まずは2025年の大阪万博で公演することですかね。万博のテーマが環境問題と関係あるかは、まだ知らないけど」

そう言って笑ったあと、以下のような目標も口にした。

「原発関係の場所でショーをやりたいとも思います。原発に対してネガティブな発言をするものではなく、代替エネルギーを紹介することで、エネルギー問題について、より考えてもらえたら、と」

環境問題を多くの人に伝えることは、困難や葛藤もあるが、二人はステレンジャーのショーを続けることに対し、前向きだ。

それは、環境問題を考え続けた二人が、ステレンジャーのショーを通して、少しでも多くの人に行動するきっかけを作る、という姿勢の表れだった。

そのためであれば、どこであろうとステレンジャーのショーをするそうだ。最後、エディーは真剣なまなざしで言った。

「ショーには絶対な自信がありますから、呼ばれれば海外だったとしてもステレンジャーをやります。…もちろん、言葉は分かりませんけどね」

環境戦隊ステレンジャーの戦いは、これからも続く!

環境戦隊ステレンジャーの公式ホームページはこちらから →
環境戦隊ステレンジャー 公式サイト

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