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不要品回収業者を正しく理解しよう① 買い子の歴史とリサイクル法

リユース業者に中古品を渡し終えた回収業者の軽トラック。中には何も残らず、廃棄物を集めていないことがわかる。
写真は記事とは関係ありません。
杉本裕明氏撮影 転載禁止

「いらなくなったものはありませんかー」とスピーカーで呼びかけながら、住宅地を回る軽トラックがいます。あるいは、「不要品を引き取ります」と言って、引き取りのできるものを書いたチラシが家庭に配られることがあります。これは不要品回収業と呼ばれる人々の仕事です。集めるのは中古品の家電製品や小型家電製品、日用品の雑貨類、鉄くず、中古の自転車など。しかし、その中に壊れた小型家電製品が混じっていることもあります。

壊れた家電製品は、自治体の許可を得ないと収集することができませんが、どの自治体も中古品を集めるのが仕事の不用品回収業者には許可を出していません。それを持って国は違法性を持ちだし、彼らを排除する動きを見せています。そして、それらが別の輸出業者の手に渡り、中国の環境汚染の原因になってきたとして、法律を改正し、受け入れ業者の規制を始めました。

しかし、国がいうほど、違法性のあるものなのか。国がいうほど、不要品回収業者たちは、壊れた家電製品を消費者から集め回っているのか、大きな疑問があります。これまでの経過を振り返るとともに、不要品回収業に携わる人たちに話を聞き、実情を調べてみました。7回にわたってレポートします。

ジャーナリスト 杉本裕明

目次

「買い子」と呼ばれる不要品回収業者

軽トラックで集めて回っている不要品回収業の人たちは「買い子」とか、「買い子さん」と呼ばれます。それは、戦後しばらくの間、くずを集めていた人たちで使われていた言葉から来ています。例えば東京では、下町のある地区に、不要品回収業を生業とする人たちが集まっていました。リヤカーや大八車で工場、商店、住宅を回り、金属くず、紙くずなど不要になったものを集めて回っていました。彼らは「買い子」と呼ばれ、それを「仕切り屋」と呼ばれる店に買ってもらいます。「仕切り屋」は買ったものを仕分けし、それぞれ利用する業者に売却します。これらは有価で取引されますから、処理費を伴う廃棄物ではありません。

当時この地区でこの仕事に携わり、後に金属スクラップ回収の会社に成長させた人は、筆者にこう語っています。

「いまでいうエコタウンですな。様々な物が売買され、それが捨てられることなく有効活用される。人々が集まって、地区は活況を呈していました」
鉄スクラップ、古紙、空き瓶などのリサイクル業界は、こうした成り立ちを経ています。そしてその仕事に高い誇りを持っています。いまのリサイクル産業の基礎がここにあったともいえます。

それから半世紀以上たち、不要品回収業の人たちの呼称にそのなごりが残っているわけです。廃棄物ではなく、不要品、つまり消費者が必要としなくなったが、なお、価値のある有用物を集めるという点で、仕事の中身は同じです。

いくつもの法律ができて複雑怪奇になった

その彼らが、いま、「違法業者ではないか」と疑われたり、「不要品回収業者を利用しないようにしましょう」と自治体が消費者に呼びかけたりし、疑いの目で見られています。それはなぜでしょうか。

半世紀前と違い、廃棄物処理法が制定され、消費者が必要とせず、不要物として自宅から戸外に出した途端に廃棄物となり、法律の手続きを守って環境を汚染しないように安全に処理・処分することが定められているからです。もちろん、中古の製品は、消費者が不要品回収業者に渡すときに、「別の人に使ってもらえたらうれしい」。回収業者も「まだ使える中古品なので捨てたりしません」という暗黙の了解があります。

しかし、回収業者が集める不要品のなかには、壊れていて廃棄物にならざるを得ないものが混じる可能性もあります。例えば、冷蔵庫を買い換える時、消費者は、古い冷蔵庫を処分してもらうために、家電店からリサイクル券を買って家電店に渡します(これは家電リサイクル法のもとで、認定された処理業者が解体し、リサイクルし、残った残渣は燃やしたり、埋め立て処分したりします)。しかし、その冷蔵庫がまだ動き、極端に古くなければ別の消費者に使ってもらうことができます。それは製品の寿命を延ばし、資源の節約になります。

実は日本の消費者はドイツなど欧州の消費者と比べて、電気製品を買って廃棄するまでの時間が短いと言われています。できる限り製品を長く使うことは、その分廃棄物の発生量を減らすことになり、資源を節約したことになります。

家電リサイクル法と小型家電リサイクル法


不要品を集めて回る回収業者さん。出されたものはみなきれいな中古品だ。椅子の脚は鉄くずとなる。
写真は記事とは関係ありません。
杉本裕明氏撮影 転載禁止

回収業者は、家電リサイクル法で指定されている、壊れたりして廃棄物となった冷蔵庫、テレビなど4品目は、国が認定した業者や廃棄物処理の許可業者でないと扱えません。不要品回収業者は、壊れた冷蔵庫を回収しても引取先はありませんから、消費者に依頼されても、「私が引き取ると違法なので、法律で認められた専門の業者さんに頼んでください」と断っています。

冷蔵庫など家電4品目については、処理ルートが法律で決められ、処理が事業者に義務づけられているのに対し、それ以外の小型家電は曖昧です。小型家電リサイクル法では、4品目以外の大半を電気・電子製品を対象にしたため、28品目を対象としています。携帯電話やパソコン、電子レンジ、掃除機、扇風機、電気こたつ、ランニングマシンに至るまで、いわゆる家電リサイクル法の冷蔵庫、テレビ、エアコン、洗濯機以外の電気を使う製品がすべて網羅されています。

しかし、家電リサイクル法が、消費者にはリサイクル費用に相当するリサイクル券の購入と、電機メーカーには引き取った廃家電のリサイクルを義務づけているのに対し、小型家電リサイクル法は自治体や国民、事業者が自主的に参加する義務づけのない緩い法律です。消費者が役所に備えたボックス回収箱に携帯電話やパソコンなどを投入したり、自治体が回収した粗大ごみから取り出したりして得た廃棄物の電機・電子機器を、国が認定した業者が自治体から買い取りリサイクルする仕組みです。

低い回収率

しかし、家電リサイクル法では排出された1,848万台(2017年度)のうち回収されたのは1,189万台、回収率は64%になっているのに対し、小型家電の方は、53・8万トンの排出量(2017年度)に比べ、回収された量は10・8万トンと、20%の回収率にとどまっています。処理が義務づけられてもいない壊れた小型家電を回収業者が収集・運搬したからといって、即法律違反になるわけではありません(政府は違法と合法の間の『グレー』と呼んでいます)。

こうしたことから不要品回収業者は、リユース業者に高く買い取ってもらえる中古品の家電製品を重点的に集め、壊れたり、部品が欠落したり、製造年月日が古すぎたりしてリユース業者に買い取ってもらえなかった小型家電を非鉄金属や金属など有価物を扱う業者のもとに持ち込んでいました。それを安く買い取った業者は破砕機で砕き、他の鉄くずと混ぜて、低級品の「雑品スクラップ」の名前で、中国に輸出したり、商社に売却したりしていました。

商社を通じて雑品スクラップを中国に輸出していたあるスクラップ業者は筆者にこう語っています。「破砕したあと、選別してプラスチック類などの異物を取り除けば、品質が上がり、国内でもそれなりにいい値段で電炉メーカーに買ってもらえるのだけれど、選別するための人件費が高すぎて採算が合いません。電炉メーカーは異物が混じったものをいやがります。それに比べて中国では人件費が安いので、手選別で異物を除去し、有効利用しているわけです」

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この記事を書いた人

朝日新聞記者を経て、フリージャーナリスト。廃棄物、自然保護、地球環境、公害など、環境の各分野に精通する。著書に『ルポ にっぽんのごみ』(岩波書店)『ディーゼル車に未来はあるかー排ガス偽装とPM2・5の脅威』(同、共著)、『環境省の大罪』(PHP研究所)、『赤い土(フェロシルト) なぜ企業犯罪は繰り返されたのか』(風媒社)、『社会を変えた情報公開―ドキュメント・市民オンブズマン』(花伝社)など多数。NPO法人未来舎代表理事として、政策提言や講演会などをしている。

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