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【レコテック野崎衛社長インタビュー】廃棄物の“見える化”で循環型社会を目指す②

レコテック株式会社の野崎衛社長
(提供:レコテック株式会社)

資源循環を“見える化”することで、マテリアルリサイクルを増やし、サーキュラーエコノミーを実現しようと活動を続けているレコテック株式会社。①では、ごみの発生から、運搬、リサイクルまで、資源循環のすべての過程をスマホ・タブレットで情報連携できる資源循環プラットフォーム「POOL」について、サービス提供に至るまでの背景やどのようなシステムか詳しく話を聞いた。

今回は、PCR材を活用して開発された「POOL樹脂」と、今後の戦略、思いの部分まで、引き続き野崎社長の話を聞いた。

目次

リサイクル材を使用しても、マネタイズが可能なビジネスへ

――野崎社長を突き動かす原体験や思いなどはどこにあるのでしょう。

元々、私自身のキャリアのスタートが、スウェーデンに本社のある廃棄物処理機械メーカーの日本代理店なんです。その会社にいた際に、スウェーデンのリサイクル事業は、日本と認識が全く異なることを知りました。日本だとプラごみを処理するリサイクラーなどの存在は、一般消費者にはあまり馴染みがありませんが、スウェーデンでは違います。

例えば、マクドナルドなどの店舗には、ごみを非常に細かく分けて捨てます。トレーの上に敷いている紙、カップ、ストローと種類別に細かく捨てていきます。店舗の敷地内に圧縮・梱包機が備え付けてあり、そこで種類ごとに梱包してしまい、それを業者が回収しに来るのです。きちんと店舗ごとに分けられ、それなりのプラごみの量が確保できるので、リサイクル事業はきちんと産業になっているんですね。

これは、まさにサーキュラーエコノミーの考え方で、“リサイクル”はサプライチェーンの重要な位置づけであるということが国民の意識にあるんですよ。

――それはかなり日本と意識が違いますね。子供時代の教育方法などに要因があるのでしょうか。

そうですね。幼児教育が大きいようです。北欧だと、子供自身が資源循環に対しての意識が非常に高い。ごみを分別するのが当たり前の世の中なので、「環境に良い」、「CO2削減」などを考える前に、分別しにくいものはめんどくさいから最初から買わないでおこうとなるわけです。

なので、当社でも、木更津市、教育委員会、学校と協議を進め、小学校へ出前授業なども行っています。取り組み開始から4年以上経っており、学校の管理栄養士などとともに、食育授業などを通して、地産地消や循環の大切さなどを一緒に考えてきました。未来を作るのは子供たちですので、この取り組みは今後も継続していこうと考えています。


食育授業の風景
(提供:レコテック株式会社)

――リサイクルをさらに加速させていくには、何が重要だと考えますか。

まだ、私も「POOL」をローンチしたばかりですので、これからなんですが、経済原理を働かせないとリサイクル材の使用は増えないと感じています。欧州を中心にあれだけ再生可能エネルギーが普及したのは、FIT(固定価格買取制度)があったからです。それと同様にEUではPCR材(PETボトルなどその製品の用途を果たした後にリサイクルされた材料)を使用しないと税金をかけるなどの措置が取られていくことでしょう。

そう考えると、何故再生樹脂を使わないのかというと、コストが高すぎるからなんです。だから、再三お話していますが、私たちはそれを使用できるまでコストを下げていきたい。経済インセンティブがあるところまでもっていきたいです。私たちのシステムでどこまで下げられるか分かりませんが、“見える化”することで、マテリアルリサイクルのサプライチェーンを構築し、リサイクルに関わるコスト削減に寄与していきたいと考えています。

また、社会的な情勢としても、現在世界中で海洋プラが問題となっていますので、PCR材は自然に使う流れになっていくのではないでしょうか。再生資源の価値が上がれば、製造側もある程度製品開発にコストがかけられます。また、“見える化”することで、カーボンオフセットをしなければいけない企業も自然と分かってきますので。

今後の展開について


「POOL PROJECT TOKYO」のプロジェクト全体スキームと参画企業
(レコテック株式会社のリリース資料より)

――今後について教えてください。

今後も、発生する廃棄物のデータは蓄積されていきますので、年間ベースで月ごとの発生量の推移を予測するといったことができるようになると思います。運搬事業者側も、予測データがあれば、更なる回収の効率化につながるのではないでしょうか。

また、昨年11月より、商業施設から発生するプラスチックの回収・リサイクルを東京都全域に拡大する「POOL PROJECT TOKYO」を開始しました。東京都と、30社以上の企業に参加していただき、マテリアルリサイクルチェーンの構築などを目指します。

回収拠点は、現在は東京が中心ですが今後は全国へと拡大していきます。ベトナムやアジアなどの世界展開も視野に入れ、2024年には、年間約2万トンの廃プラを回収し高度リサイクルする体制の構築を目指していきます。


レコテックの理想イメージ
(レコテック株式会社のリリース資料より)

PCR材を材料に独自のPOOL樹脂も開発しました。トレーサビリティが取れていて安全性が高く品質もあるものですので、この商品の販売に向けてのブランディングにも注力していきます。

――POOL樹脂についてお聞きしたいのですが、通常再生ペレットを製造した場合、混合プラの選別の難しさなどから、色がどうしても黒やグレーになってしまうという課題があります。しかし、貴社の「POOL樹脂」の色は非常に透明に近い印象です。どのようにして色の課題を克服したのでしょうか。

分別排出に協力してくださる排出元の分別精度が向上してきていることや、排出元の分別精度によってグレード分けを行い、回収・リサイクルすることで、品質(色)は徐々に担保できるようになってきました。

現在は、素材が混合している状態でリサイクルを行っていますが、将来的には、光学選別機などを活用した機械選別を行うことを想定し、いくつかのプラントでテストを繰り返しています。機械選別のプロセスに入ってくる資材の組成をプラントに受け渡していくことで、現状よりも選別の効率を向上させることが可能だと考えています。


PCR材のPOOL樹脂
(レコテック株式会社のリリース資料より)

――POOL樹脂の販売を開始した際には、どの程度の値段設定や販売目標を設定していますか。

POOL樹脂の価格は現在検討中です。販売目標に関しては、2023年度中に1万トンの販売を目指していきます 。

参考:レコテック株式会社 資源循環プラットフォーム”POOL”を新たにローンチしました。 – テクノロジーでごみを資源に

野崎衛(のざき・えい)
北欧の廃棄物処理設備日本総代理店にて営業責任者を務め、製造、物流、流通などあらゆる業界への設備の導入及び資源循環に関するコンサルティングを行う。
レコテック社設立後は、食品リサイクルに対応するドイツの食品廃棄物向けメタン発酵技術を日本に輸入建設するプロジェクトのPMを務めるなど、先進的な資源循環システムのハード・ソフトの導入を行う。また、国内外の廃棄物問題に取り組み、JICA事業チーフコンサルタントなど官民の事業にも関わっている。

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この記事を書いた人

映画を愛してやまない1988年生まれのライター。ゆとり世代だが、ゆとり世代ではないというのが口癖。住宅関係と金属関係の業界紙を2社経験。空き家問題、木材関係、林業、廃プラリサイクル、金属スクラップに至るまで環境に関わるものを雑多に取材している。大の酒好き。新潟の日本酒に目がない。虎視眈々と映画脚本家デビューも狙っている…。

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