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不要品回収業者のことを正しく理解しよう⑦ 廃家電収集の実態は?

リユース業者に中古品を渡す回収業者さん。
写真は記事とは関係ありません。
杉本裕明氏撮影 転載禁止

不要品回収業者は、廃冷蔵庫・テレビなどの家電4品目やその他の小型家電を雑品スクラップ関連の輸出業者に大量に持ち込んでいたのでしょうか。筆者は2017年秋からウォッチしていますが、雑品スクラップ業者に廃家電を持ち込んでいる例は非常に少ないことが類推されました。現場を見てみると――。

ジャーナリスト 杉本裕明

目次

回収業者の役割は本当に大きいのか?

筆者は2017年暮れに雑品スクラップを扱っている業者10社ほどに電話をかけ、小型家電と廃プラを扱っているか尋ねたことがありました。環境省が廃棄物処理法とバーゼル国内法を改正し、廃家電を保管している業者に自治体への届け出義務を課し、破砕し、雑品スクラップに混ぜて輸出する行為を規制しようとしていた時期です。「有害使用済み機器」と命名したこの規制で環境省は、輸出先の環境汚染を防止するのが目的と説明しましたが、実は家電リサイクル法と小型家電リサイクル法のルートによらないルートを止め、二つの法律の回収率を挙げたいとの狙いがあったようでした。

法律のルートに乗らないルートで、輸出業者への主要な持ち込み先を軽トラックで住宅街を回る不要品回収業者としていました。2017年の家電4品目と小型家電のフロー図(家電は台数、小型はトンで表示)によると、4品目は370万台、小型家電は4万トンを輸出業者らに搬入したことになっています。「4品目の回収行為は違法なので、そんなにおおっぴらに集めることがあるのだろうか。廃小型家電の持ち込み先も極端に先細りしているのに」と疑問が膨らみますね。ある研究者が、リユース業者の協力を得て、17年11~12月にかけて大阪府と埼玉県の3カ所で計50人に聞き取り調査をしました。その結果を紹介します。

50人の不要品回収業者に尋ねた

結論からいうと、違法に当たる4品目の廃家電を収集している業者は皆無に近かったのです。引き取りを認めた業者も「客に『困っている』と泣きつかれ、リサイクル券相当のお金をもらい、処理業者に持ち込んで払って処分した」と言います。一方、廃小型家電は家庭から譲り受け、雑品の輸出業者に持ち込まれていますが、大半の回収業者が「これまで受け入れてくれたのに夏から拒否されて困っている」と、大半の業者が廃小型家電の持って行き場がないことに困っていました。

廃プラスチックに至っては悲惨で、以前は有価で売却できたために廃プラスチックも回収していたのですが、17年夏からは、廃プラスチックも中国が輸入禁止措置を打ち出したことから、逆有償、つまり、お金を出さないと引き取ってくれない状況に転じました。したがって、「廃プラは消費者から引き取らない」状況です。

ごく少数の雑品スクラップ業者しか持ち込めていないことを示すこの調査は、中国の禁止の方針を知り、輸入業者がいち早く対策をとったことを示唆しています。ヤード業者の大半が撤退し、不要品回収業者も持っていき先が細っているのに、政府のフロー図は、相変わらず大量の4品目と小型家電が持ち込まれていることになっています。環境省が推定した回収業者の家電の少なくない台数は、適法の中古の家電ではないのでしょうか。

廃棄物の家電ばかり集めても商売にならない


リユース業者に中古品を審査してもらっている回収業者さん。中には鉄くずはあるが、家電の廃棄物は見当たらない。
写真は記事とは関係ありません。
杉本裕明氏撮影 転載禁止

筆者は、幾人かの回収業者に尋ねてみました。

「リユース用の中古品よりも、廃家電を集めて回っているのですか?」
こんな回答が返ってきました。
「あのね、廃家電を持ち込んでも1キロ10円でしか買ってくれないんだよ。軽トラックに100キロ乗せても1,000円、無理して200キロ乗せても2,000円にしかならない。1日巡回してかかるガソリン代にしかならないのに、そんなものを集めたところで食べていけない」
「集めるのは高く売れるリユース目的の中古品。なぜ壊れた家電も集めるのかと思われるが、消費者から『これも持っていって』といわれると、競争があるので、断れないんだよ」
回収業者間の競争は激しく、例えばある業者はこう打ち明けます。
「チラシを事前に配って〇日の朝に、チラシを上にして玄関に出してほしいと、消費者に伝えているのに、別の業者が早朝に回って、高額の中古品だけを捕ってしまうことがあるんだ」

違法行為していた?

一方、雑品スクラップの輸出業者は用心深くて、まず電話に出ません。長く付き合いのある回収業者でないと、搬入を認めないといわれます。そこで知り合いの不要品回収業者に小型家電を引き受けているヤード業者を教えてもらいました。

17年の暮れのことです。大阪府南部の国道沿いに約2キロに渡って車の解体業者と雑品スクラップ、廃プラスチックを扱う業者が並んでいます。回収業者に教えてもらった業者のヤードを道路からのぞくと、地元の家電販売店の軽トラックが中に入っていきました。そして冷蔵庫とエアコンを荷下ろし始めました。その写真を撮ったのですが、レンズが光ったのか、店主が作業員に伝え、飛んできた複数の作業員にヤード内に引きずり込まれそうになりました。彼らが慌てたのは、家電販売店が廃冷蔵庫と廃エアコンを持ち込むのは違法行為だからでしょう。

その2年後の昨年暮れ。同じヤードをのぞくと、軽トラックや2トントラックが金属ごみを積んで出入りしていましたが、構内も含め、4品目はおろか、小型家電も見当たりません。もちろん、大阪府への届け出はしていません。山になった雑品スクラップはトレーラーに積み込まれて、どこかに運ばれていきますが、違法行為はないようです。さらに教えてくれた回収業者に電話で聞くと、「18年になってあのヤードも小型家電は搬入停止になりました。もちろん、冷蔵庫などの家電4品目はもとから私たちが持ち込めるわけもありませんでした」

純化される不要品回収業者

ある雑品スクラップを扱っている業者は、筆者にこう語ります。「回収業者が持ち込む量なんてほんの少しです。だって軽トラックにわずかな量しか積んでいないから。メーンは解体業者など別ルートです。中国が雑品スクラップの輸入を禁止し、私は輸出をやめました」

先の回収業者がこうため息をつきました。
「壊れた小型家電は、消費者から頼まれても引き受けていません。廃プラスチックは数年前までは有価で売れたのに、今は処理費を払わないと引き取ってもらえない。だからこれも消費者から引き取りを断っています」
「でも」といって、やや明るい顔を見せてこう言いました。
「この仕事はお客さんに喜んでもらえるし、待っていてくれる人もいる。やりがいのある仕事だからやめない」

純粋な中古品を扱うリユースの世界に純化されつつあるのかもしれません。

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この記事を書いた人

朝日新聞記者を経て、フリージャーナリスト。廃棄物、自然保護、地球環境、公害など、環境の各分野に精通する。著書に『ルポ にっぽんのごみ』(岩波書店)『ディーゼル車に未来はあるかー排ガス偽装とPM2・5の脅威』(同、共著)、『環境省の大罪』(PHP研究所)、『赤い土(フェロシルト) なぜ企業犯罪は繰り返されたのか』(風媒社)、『社会を変えた情報公開―ドキュメント・市民オンブズマン』(花伝社)など多数。NPO法人未来舎代表理事として、政策提言や講演会などをしている。

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