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不要品回収業者を正しく理解しよう③ 違法業者のイメージが強いのはなぜか

不要品回収業者さんのトラックに同乗したが、ほぼすべてが中古品である。
写真は記事とは関係ありません。
杉本裕明氏撮影 転載禁止

リユース目的で中古の家電製品を回収する不要品回収業者に対し、家電リサイクル法の施行状況について審議する経産省と環境省の審議会の合同会議で、取り締まりをしっかりするよう求める意見が相次ぎました。今回は回収業の人たちを取り巻く少し前の状況を解説しましょう。

ジャーナリスト 杉本裕明

目次

自治体のアンケート結果

合同会議で、環境省が毎年全国の1,700の市区町村に行っているアンケート結果と、環境省が「違法な不用品回収事業者対策の取り組み」を資料として出したことに対する反応でした。

アンケート結果では、2017年に「不用品回収業者」の存在を尋ねたところ、存在するとの回答が856自治体あり、2014に比べ、1割減っていました。しかし、どういう業者が携わっているかを見た分類によると、軽トラックで巡回する人たちは減っていません。一方、空き地に看板を出して保管している業者は448から318に減っていました。実はこの空き地型とよばれる業者には、かつてリユース用の中古品と偽って、廃棄物となった家電製品を積み上げ、違法処理をしていた業者がおり、住民の苦情もあって、自治体は主にこの業種に対して指導を強化したり、警察が摘発したりしていたのです。

ところが、委員らの反応は、スピーカーで放送しながら巡回したり、チラシをまいてあとで回収したりする軽トラックの回収業者を念頭に話しています。委員らは実態をよく知らないようです。

この会議を傍聴していた筆者は、その後環境省の担当職員に「軽トラックで回っている業者の大半はリユース目的で中古品を集めていると思います。これが違法なのでしょうか」と尋ねました。返ってきた答えは、「自分たちが問題視しているのは、廃棄物を集める違法な回収業者。リユース品を集める行為はもちろん違法ではありません」。

しかし、そう言いながら、環境省が行った市区町村に対するアンケートでは一般的な不用品回収業者の数を聞いています。そばから見ても、軽トラックに積まれた冷蔵庫は、リユース用の中古品か、それとも輸出業者のヤードに運ぶ廃棄物なのか、トラックの後を追ってみないとわかりません。だからといって、すべての回収業者を違法行為の疑いのある「犯罪予備軍」と見なしていいものでしょうか。レッテルを貼られたまじめな業者はたまったものではありません。

岐阜市が告発

現に過去、中古の家電を軽トラックに積んでいた回収業者がパトカーに止められ、警察署に呼び出され、取り調べを受けるケースが続出しています。環境省の要請で、警察が取り締まりを強化することになったと言われています。2013年頃がピークに当たりますが、その少し前、岐阜市で空き地に廃棄物の家電製品を積み上げ、破砕していた業者が廃棄物処理法違反(許可なしでの破砕処理行為)容疑で摘発されたのをはじめ、住民からかなり苦情が出ていたことが背景にあります。摘発された業者は、「これはリユース用の中古品だ」とうそぶいていました。当時、筆者は岐阜市の現地を取材したことがあるのですが、市の職員はそのいきさつをこう語ってくれました。

「近所の住民から、破砕機の騒音でうるさくてしようがないと苦情が絶えませんでした。野外に積んでいるので、指導し、中古品というなら雨を防ぐ建物を設置するなどの措置をとるよういいましたが、一向に聞き入れる様子はありませんでした。度重なる指導や警告を無視したため、岐阜県警に廃棄物処理法違反容疑(無許可での廃棄物の処理・処分)で告発しました。それをもとに警察が摘発しました。経営者と社員が逮捕されたあと、経営者の親族が積まれたままの廃棄物を撤去し、更地にして土地の貸主に返したそうです。経営者と社員は簡易裁判所から30万円の罰金刑を受けています。市内には同様の空き地型といわれる業者が多数いましたが、幾つかの業者は廃業し、残った業者は指導に従って法律を守ってくれています」

筆者は他の業者にも尋ねたが、まじめにやっている自分たちと、彼らと同じように見られるのは迷惑だと言う。摘発された業者はそもそも違法行為を承知で始めた若者たちなのだといいます。

当時は軽トラックで巡回する回収業者の中にも順法精神のない人もいて、「家電をトラックに積み上げた後、法外な運賃を請求された」といった苦情が、自治体の消費生活センターに多数寄せられていました。そこで、「これではイメージが悪くなるだけだ」と、心配した回収業者たちで組合をつくることになったのです。

回収業者が組合を作る


2014リユース業界総会。
写真は記事とは関係ありません。
杉本裕明氏撮影 転載禁止

2013年4月10日、東京の憲政記念館で「一般社団法人日本リユース・リサイクル回収事業者組合」(JRRC)の設立総会が開かれ、全国から500人以上の回収に携わる事業者が集まりました。来賓らによるあいさつや、「JRRCに求められる役割と責任」についての報告があり、会場は若い人からお年寄りまでさまざまな事業者が集まりました。事業者といっても大半が1人で1台の軽トラックで巡回して集める零細業者です。

彼らに聞いてみると、「警察に呼び止められたりして、疑いの目で見られるのはたまらない」「このままだとどうなってしまうのかと不安になった」「なぜ、国は私たちを敵視するのか。違法なことはしていないし、環境に悪い行為ではない。むしろ、役所がやれないことを肩代わりしていると思っている」といった声が多数出ました。
会場からは、「もっと国民にアピールし、理解してもらわないと」「国に違法扱いされては困る」といった意見が相次ぎました。

ところで、環境省が「無許可」と言うのは、一般廃棄物(家庭ごみ)の収集・運搬業の許可のことです。家庭ごみは、市町村が収集と処理を行う責任があり、多くの市町村は、特定の事業者にその業務の一部を廃棄物の収集・運搬業者などに委託しています。

また、委託を受けた業者は自治体から収集・運搬業の許可を与えられた人たちで、自治体が新たに業者に業の許可を与えることはまずありません。廃棄物処理法では、市町村が回収業者に収集・運搬業の許可を与える可能性はゼロに近いのです。

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この記事を書いた人

朝日新聞記者を経て、フリージャーナリスト。廃棄物、自然保護、地球環境、公害など、環境の各分野に精通する。著書に『ルポ にっぽんのごみ』(岩波書店)『ディーゼル車に未来はあるかー排ガス偽装とPM2・5の脅威』(同、共著)、『環境省の大罪』(PHP研究所)、『赤い土(フェロシルト) なぜ企業犯罪は繰り返されたのか』(風媒社)、『社会を変えた情報公開―ドキュメント・市民オンブズマン』(花伝社)など多数。NPO法人未来舎代表理事として、政策提言や講演会などをしている。

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