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不要品回収業者を正しく理解しよう② 法改正と取り締まり要請

港のヤードに山積みされた雑品スクラップ。
写真は記事とは関係ありません。
杉本裕明氏撮影 転載禁止

こうして年間200万トンの雑品スクラップが中国に輸出されていました。一方中国ではその選別の過程で、洗浄した排水が環境汚染を引き起こしたりして大きな問題になりました。許可を得ない違法業者も多く、中国政府も手をやいていたというのが実情です。

リサイクルを中国に頼るこの構造は2000年頃から始まり、ずっと続いていたのです。これを問題にしたのが、日本の環境省でした。

ジャーナリスト 杉本裕明

目次

破砕した家電の輸出をやめさせるために法改正

有害廃棄物の輸出入は、バーゼル条約に基づくバーゼル国内法によって、日本政府と相手国に届け出承認を受けることが定められています。しかし、破砕した家電は規制の対象外で、川崎港はじめ日本の主な港の近くには、雑品スクラップを山積みにしたヤードが林立していました。ところが、破砕した際や雑品スクラップを船で運ぶ途中に火災を起こす事故が相次ぎました。これは家電に含まれたリチウム電池や残った廃油などが原因ではないかと見られています。

そこで環境省は、2017年に輸出管理強化のためにバーゼル国内法を改正し、規制対象に加えるとともに、廃棄物処理法も改正し、廃棄物になった家電を保管したり破砕したりしている業者に都道府県と政令市への届け出を義務づけました。これまでは、有価で取引されていたので、行政は立ち入り調査をすることが難しかったのが、これで実態を把握し、指導をしやすくなりました。この届け出の仕組みは、島根県の使用済物品等の放置防止条例(2016年施行)の独自制度を参考にしたものです。違っているのは、島根県の条例がリユース目的の中古品や、農機具、自転車などを集めている回収業者も対象とし、罰則は改善命令違反が罰金20万円、無届けが5万円の科料とそれほどでもないのに対し、国の規制は、廃棄物の保管と破砕に関わる業者に限ったことと、違反に対し、自治体の許可が必要な廃棄物処理業者と同等の極めて厳しい罰則にした点でした。環境省の狙いは、もっぱら輸出にかかわるヤード業者にあったのです。

政府は中国への輸出に関わる業者を規制したかった

法改正を目指していた2016年当時、環境省の担当者は筆者にこう語っています。「どの港もヤードだらけ。中国系の業者が次々とスクラップヤードを増やしている。立ち入り調査も難しく実態がつかめない。経産省はこの問題に関心が薄い。しかし、こうした事態を黙認していては中国の環境汚染を招き、国際問題にもなりかねない。それにこの規制によって中国に向かっていた家電ごみの流出を抑制し、国内リサイクルに回せば、資源の有効利用にも貢献できる」

法改正では、廃棄物となった小型家電を運ぶ不要品回収業者は規制の対象外となりましたが、担当者はこう解釈しました。

「運ぶだけの業者は、その後の保管と破砕処理に関与していない。中国に輸出されていることも知らないだろう。それに彼らが運んでいる多くの家電製品はリユース用の中古製品なので、廃棄物の家電が混じっていたからといって即違法とは言えません」

順当な判断だと思います。10個の中に1個、リユースの対象からはねられた物が混じっていたからといって、廃棄物処理法違反で摘発というのはあまりに厳格すぎ、他の様々な行為と比べて公平性が保てないからです。

ところが、改正法が施行されたのちの2018年12月に開かれた家電リサイクル法の施行状況を点検する経済産業省と環境省の審議会の合同会議では、不用品回収業者が話題になり、委員らからこんな意見が飛び出したのです。

委員らが、不要品回収業者の取り締まりを要請

不要品回収業者さんが、リユース品の輸出業者に持ち込み、相談している。
写真は記事とは関係ありません。
杉本裕明氏撮影 転載禁止

川村仁志・ 株式会社ビックカメラ代表取締役 副社長執行役員「私が住んでいるところでは、ほぼ毎週の日曜日、マイクの声を聴くということがあり、ポスティングの広告もある。ポスティングについてはこの1年間で私の家でも5回ぐらいポスティングされ、しっかり取締りをしていただきたい」

大石美奈子・日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会代表理事「私の近所も不用品の回収業者が車で回ってきている。マンションのポストには日々チラシがポスティングされている。消費者はなぜこのような違法かもしれないところに廃家電を出してしまうかという1つの理由だが、分かっていても仕方なく出すという場合があるのではないか」

峯田季志・全国電機商業組合連合会会長「不用品回収業者について自治体に違法な不用品回収業者への指導を徹底していただいておるが、(環境省調査で)不用品回収業者が存在すると回答した自治体が全自治体の半数程度となっている。これは違法業者の存在認識自体ができていないということ。我々の感覚からすると、全国のほとんどの自治体で違法な回収業者が活動していると思われる。回収業者への指導をしっかりと行っていただきたい」

環境省課長補佐「1,700の市区町村の半分ほどの回答書をよく見ると、スピーカー等をやりながら家の周りを巡回しているとか、あと家のポストにチラシを投函しているとか、空き地に看板を立てているとか、具体の事例の認知ということで伺い、指導の状況が起こったというところのみ答えていただいている。アンケートの中身の有無にかかわらず、きちんと市町村を含めて指導を徹底してというお話があったと思います。環境省としてできることをやっていくということが基本です」

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この記事を書いた人

朝日新聞記者を経て、フリージャーナリスト。廃棄物、自然保護、地球環境、公害など、環境の各分野に精通する。著書に『ルポ にっぽんのごみ』(岩波書店)『ディーゼル車に未来はあるかー排ガス偽装とPM2・5の脅威』(同、共著)、『環境省の大罪』(PHP研究所)、『赤い土(フェロシルト) なぜ企業犯罪は繰り返されたのか』(風媒社)、『社会を変えた情報公開―ドキュメント・市民オンブズマン』(花伝社)など多数。NPO法人未来舎代表理事として、政策提言や講演会などをしている。

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