毎日のように飲む、お茶やコーヒー、ジュースなどの飲料製品。製品はよく見るのに、その製造工程や飲料メーカーが行っている環境への取り組みを知っている人は、あまりいないのではないでしょうか。全国にはさまざまな飲料メーカーが点在していますが、その中には工場見学を行っているメーカーもあります。
そこで今回は、環境への取り組みを学べる飲料メーカーに焦点をあててご紹介!個人でも、ご家族でも楽しめる工場見学についてみていきましょう。
なぜ飲料メーカーが工場見学を行うのか
工場見学は、「無料」で行っているところが多くみられます。しかも販売商品を試飲できたり、お土産をもらえたりと、楽しみながら学べる絶好の社会科見学スポットなのです。それではなぜ飲料メーカーは、一見、自社の売り上げには直結しなそうな工場見学を行うのでしょうか。
企業や商品のイメージアップや宣伝
消費者や取引先に工場見学をしてもらうことで、商品が作られるまでのストーリーや、製造方法のこだわりなどが伝わり、商品のイメージアップや信頼につながります。
さらに自社が企業活動をすることで生じうる環境問題について、真摯に取り組んでいることをアピールすることで、企業のイメージアップにつながるのです。工場見学後には、見学で学んだ内容をほかの人に話してもらうことで、宣伝効果も期待できます。
社会貢献をするため
学生の社会科見学を受け入れることで、地域の学習に貢献する目的もあります。ものを製造するしくみや知識を地域の人に伝え、その地域で企業活動していくことへの理解を得たり、企業のイメージアップにつなげたりしているのです。
社員のモチベーションを上げるため
工場の生産管理の場を、社外の人に見学してもらうことで、生産管理を行う社員の緊張感を高める効果があります。見られていることで、やる気が高まり、結果的に生産性が向上するメリットがあるのです。
工場見学が可能な飲料メーカー3選
全国の飲料メーカーの中から、工場見学ができるところを3つピックアップ!各工場では、どのような環境への取り組みを学べるのか、ご紹介していきます。
コカ・コーラ
コーラの製造の歴史や製造方法をスクリーン映像で学習したのち、コーラやコーヒー、ジュースなどの製品を試飲できます。もちろん生産ラインの見学もでき、専用ガイドさんが工程を説明してくれるのです。
コカ・コーラ工場では、「Water Neutralityを目指して」をコンセプトに、コカ・コーラ工場で使われた水と同じ量の水をコミュニティや自然に返すための取り組みを中心に、さまざまな環境活動を実施。そんなコカ・コーラの工場見学では、以下のような環境活動について学べます。
1.水源を守る取り組み
工場を建てる前後の水源の調査や、水源となる森の植林・間伐作業、微生物による排水処理、節水や水の再利用をしています。
2.CO2排出削減の取り組み
ペットボトルは、プリフォームというペットボトルの原型を膨らませて作っています。プリフォームは小さいため、多くのペットボトルを工場に運べます。それにより、トラックの使用回数を減らし、CO2の排出を削減しているのです。
3.容器や廃棄物のリサイクル
ビンは粉砕して断熱材や建築・土木材料にする、スチール缶は鉄鋼メーカーで溶かして、自動車部品や建築材料にするなど、容器のリサイクルを行っています。コーヒーやお茶の粕は、2004年からはほぼ100%リサイクルしており、肥料やエネルギーとして再利用されています。
4.環境にやさしい自動販売機
ピークシフト自販機は、昼の最長16時間は冷やすための電力を使わず、電力使用量の少ない夜の間に商品を冷やしています。昼には自動販売機から冷気が逃げないよう、高い気密性と断熱性をもたせた作りなっているのです。この工夫によって、日中に使う電気を今までより最大95%も減らすことに成功しています。
コカ・コーラ工場のエリア
コカ・コーラ工場は、札幌工場(北海道)、花巻工場(岩手県)、蔵王工場(宮城県)、多摩工場(東京)、東海工場(愛知県)、砺波工場(富山県)、京都工場(京都府)、えびの工場(宮崎県)と、全国にあります。どの工場も無料で見学できますが、工場によっては事前予約が必要になるので、各工場のサイトをチェックしてみましょう。
参考:The Coca-Cola Company 全国のコカ・コーラ工場
サントリー
サントリーの工場見学では、製造工程の見学、環境活動の紹介、ビールや焼酎、ワインの試飲(工場によって有料)、ショップでのグッズの購入が可能です。
また、サントリーは「水と生きる」をコンセプトに、自然環境の保全・再生活動や、工場での省エネ・節水に取り組んでいます。そのため、サントリーの工場見学では、以下のような環境活動について学んでみましょう。
1.CO2削減のための省エネ活動や再生エネルギーの利用
- 自家発電で生じた熱を、ビールの仕込みやお茶の抽出に再利用する
- CO2排出量の少ない都市ガス、液化天然ガスを燃料に使用
- 熱エネルギー回収の向上、生産設備の最新化によってCO2削減
- 飲料業界最大規模の太陽光発電パネルを設置し、工場で使用する電力の一部に使用
- 雪室をワイン樽貯蔵庫の冷房に使用
- 地下水で生産設備を冷却
- グレーンウイスキー製造時の廃棄物を燃料にして、蒸溜の熱源として使用
2.水のサスティナビリティ(持続可能性)のための研究
サントリーでは、森が地下水をためる機能を向上させるために、下水の流動シミュレーション、水文調査(工事による地下水や地上の流水への影響の調査)などさまざまな研究を実施しています。
3.水資源の有効活用
使う水を少なくし、繰り返し使い、処理して再利用する「水の3R」を徹底しています。地下水、河川・湖の水、雨水、上水、再生水(外部から供給されている水)といった5つの浄水度に水を分類。製造工程によって利用する水の浄水度を分け、浄水度の高い水を必要とする製造工程から段階的に利用しています。
4.森と水の学校での「水育」活動
白州(山梨県)・奥大山(鳥取県)・阿蘇(熊本県)の広大な自然の中で、「水の大切さ」や「水を育む森や自然の大切さ」を学べる「森と水の学校」の活動をしています。
5.資源の循環活用
生産工程で発生する副産物や廃棄物の排出量削減と、100%再資源化に取り組んでいます。
お酒の工場も豊富なサントリー
サントリーの工場は清涼飲料水だけでなく、お酒の工場も豊富。以下のように、全国にさまざまな工場があります。どの工場も入場料は無料ですが、ツアーや講座、試飲には有料の場合があります。ワイン工場以外は事前予約が必要になるので、各工場のサイトから予約しましょう。
- ビール工場…東京都、京都府、熊本県
- ウィスキー工場…大阪府、山梨県
- ワイン工場…山梨県
- 天然水の工場…山梨県、鳥取県、熊本県
参考:サントリー 全国のサントリー工場
アサヒ飲料
アサヒ飲料の工場は、工場によってはミュージアムが併設されているのが魅力。群馬工場は「カルピスみらいのミュージアム」、明石工場は「三ツ矢サイダーミュージアム」という施設があり、各飲料の歴史や製造を学んだり試飲ができたりします。
アサヒ飲料では「環境への取り組みをさらに強化するとともに、「環境×事業」での新たな環境価値を創造し、社会に提供する」をコンセプトに、さまざまな環境活動を実施。
飲み物の製造工程を見学しながら、以下のような環境への取り組みについて学んでみましょう。
1.廃棄物や容器のリサイクル
茶粕やコーヒー粕、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、ガラス瓶、段ボール箱すべてが100%リサイクルされています。
2.省エネ・省資源
最新技術で果汁飲料を殺菌することで、ペットボトルにつめたあとの熱による殺菌が不要に。熱処理がないことで、ペットボトルを薄くでき、軽量化を実現しています。
3.微生物による水の浄化とエネルギーの確保
排水はメタン菌で分解処理してから川へ排水。できたメタンガスは熱エネルギー源として工場で使われています。
4.熱エネルギーの再利用
加熱殺菌後の熱くなった飲み物を冷やした水は、50度のお湯に。これをさらに温めて利用し、ボトルにつめる前の飲み物を温めています。
5.CO2の排出削減を目的とした電動フォークリフトの利用
工場内で荷物を運ぶときに使われるフォークリフトは、電動。排気ガスを出さないので、燃料の節約になり、空気も汚しません。
アサヒ飲料工場のエリア
アサヒ飲料工場は、明石工場(兵庫県)、富士山工場(静岡県)、北陸工場(富山県)、群馬工場(群馬県)、岡山工場(岡山県)、アサヒビール茨城工場(茨城県)にあります。どの工場も無料で見学が可能ですが、事前予約制となります。夏休みや春休み、クリスマスにはお子様向けのイベントもあるので、家族での見学もおすすめです。※岡山工場の工場見学は、不定期に実施しています。
参考:アサヒ飲料生産・工場案内
飲料メーカーの工場見学後は自分でできる環境活動をはじめてみよう
飲料メーカーの工場見学は、楽しい体験や試飲ができるだけでなく、持続可能な企業活動をしていくための取り組みについても学べる貴重な体験です。
見学後は「あの会社は容器のリサイクルを頑張っているから、今日から容器の分別をしっかりしよう!」といったような、意識の変化もあるかもしれません。飲料メーカーの環境への取り組みに少しでも貢献できるよう、できることから始めてみてはいかがでしょうか。
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