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【合成洗剤VS石鹸】どちらの方が環境にも人にもやさしいのか考える

昔から、合成洗剤と石鹸のどちらを使用した方がよいのかという議論は多くされてきました。一般消費者である私たちは、「合成洗剤は水環境を汚染し、人体に害をおよぼす」という説や、「石鹸は環境にも人体にもやさしい」という説をよく耳にすると思います。

しかしそれらは事実なのでしょうか。今回は「合成洗剤と石鹸の成分の違い」や、「合成洗剤と石鹸のどちらが環境にも人にもやさしいのか」について、過去の論文などを参考にしながら考えます。

目次

合成洗剤と石鹸の成分とは

まずは合成洗剤と石鹸の成分には、どのような違いがあるのか確認しておきましょう。

合成洗剤は石油や天然油脂を化学合成したもの

合成洗剤とは、石油や天然油脂を化学合成した洗剤のこと。石油や天然油脂から合成界面活性剤原料をつくりだし、さらに「硫酸化」「中和」「付加重合」などの複雑な化学合成を経て、合成洗剤はつくりだされます。

代表的な成分には、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ウラレス硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなどがあります。

石鹸の主成分は天然油脂とアルカリだけ

石鹸の材料はいたってシンプル。ヤシやナタネなどの植物性油脂、あるいは豚脂や牛脂などの動物性油脂と、アルカリの2種類のみからできています。石鹸の歴史は古く、紀元前3,000年ころから使われ始め、約5,000年の歴史があるのです。

粉や固形石鹸には「脂肪酸ナトリウム」「石ケン素地」と表示し、液体石鹸には「脂肪酸カリウム」「カリ石ケン素地」と表示されています。

合成洗剤と石鹸があたえる「環境への影響」

成分の違いによって、それぞれ環境へどのような影響があるのでしょうか。

合成洗剤があたえる「環境への影響」

合成洗剤はかつて、泡公害や富栄養化の原因になっていました。以前の合成洗剤は簡単に分解できなかったため、川で泡が発生する泡公害が問題になったのです。さらに合成洗剤に含まれていたリン化合物は、湖沼などに植物プランクトンを大量発生させる富栄養化の原因になりました。

しかし現在では、分解しやすい界面活性剤に改良され、リン化合物を排除した無リン化洗剤に切替わっています。さらに下水処理能力も向上し、90%以上の有機物と界面活性剤を除去できるようになっているため、水環境への影響はほぼないとされているのです。

とはいえ、現在の下水処理能力でも、界面活性剤を100%除去できるわけではありません。除去できなかった界面活性剤は、水環境を汚染することには変わりないのです。界面活性剤は魚のエラ組織を傷つけたり、酸素不足にさせたりするため、合成洗剤が完全に環境にやさしくなったとはいえない でしょう。

参考:日本石鹸洗剤工業会 洗剤成分の環境影響は最終的には生態リスクでみる

参考:オレオサイエンス 第7巻第1号 水環境系に対する界面活性剤の影響

石鹸があたえる「環境への影響」

石鹸は、油や水道水中のミネラルと結びつくと、ベタベタした灰色の物質や白い粉状の「石鹸カス」になります。石鹸カスは魚のエサになったり、微生物によっても水と炭酸ガスにすばやく分解されたりするため、合成洗剤に比べて環境への負荷は少ないのです。

しかし岩手県立大学の山田一裕氏の論文によると、石鹸の1回の使用量の目安は合成洗剤よりも多いとしています。そのため石鹸自体には毒性はなくても、石鹸を使用することで水環境への有機汚濁性は高くなるのです。

有機汚濁とは、その名のとおり、有機物が水環境を汚濁することです。石鹸は有機物の塊です。石鹸カスなどの有機物が過剰に水環境へ排出されると、水中の微生物が集まって有機物を分解します。分解にはたくさんの酸素を必要とするので、水中の酸素濃度が低くなってしまうのです。すると水中の生き物は酸欠になり、生き物にとって住みにくい環境になる可能性があります。

石鹸は分解性にすぐれてはいますが、排出量が多いと、水中の生き物にとって住みにくい環境に変えてしまう可能性もあるのです。

合成洗剤と石鹸があたえる「人への影響」

合成洗剤は皮膚に吸収されて蓄積し、人体に影響をおよぼすというのは本当なのでしょうか。また、石鹸は人に何か影響をあたえることがあるのか、解説していきます。

合成洗剤があたえる「人への影響」

1983年に行われた厚生省環境衛生局食品化学科(当時の名称)の書籍「洗剤の毒性とその評価」では、合成洗剤の界面活性剤は人体へ害をおよぼさないとしています。この書籍は、過去に行われた様々な界面活性剤の毒性試験の結果をまとめ、評価したもの。

様々な界面活性剤が人の皮膚に害があるのか、皮膚から浸透したり、体内に蓄積したりして人体に害をおよぼす可能性がないかも調べています。その結果、界面活性剤は通常の使用方法では、人体へどの害もおよぼさないと結論づけました。

しかし消費者の間では、界面活性剤は皮膚に炎症をおこしたり、アトピー性皮膚炎、化学物質過敏症の原因になったりするといった情報をよく耳にします。こういった情報の拡散は、「一部の研究者が、自身の専門外の分野について一般消費者向けの書籍で解説するとき、間違った情報を解説しているためだ」と横浜国立大学の大矢勝教授は分析しています。

石鹸があたえる「人への影響」

石鹸は原料が天然油脂であることや、ミネラルと結びつくと石鹸カスになって分解されることから、人の健康面に悪い影響はあたえないとされています。

健康面では影響がないとされる石鹸ですが、合成洗剤より使いにくく感じる面はあります。例えば、石鹸で髪の毛を洗った場合。弱酸性の髪の毛を弱アルカリ性の石鹸で洗うと、髪の毛をコーティングしているキューティクルの重なりが開きます。開いたキューティクルによって、髪の毛がきしんだ手触りになるのです。

しかし酸性のリンスで髪の毛を中和してあげると、キューティクルは元の閉じた状態に戻り、髪の毛のきしみを和らげられます。

参考:岩手県立大学 山田一裕氏 環境教材としての合成洗剤の考え方
参考:日本家政学会誌 Vol.6 安全性・環境問題に関する消費者問題の課題

合成洗剤と石鹸のどちらが環境にも人にもやさしいのか

合成洗剤と石鹸を比べると、「石鹸の方が環境にも人にもやさしいにきまっている」と思われる人が多いかもしれません。しかし実際は石鹸も無害というわけではなく、使いすぎると水環境を汚染する原因にもなります。

合成洗剤は改良が重ねられ、水環境を汚染しにくいものに変化しています。人体へも、普通に使用している分には害がないと立証されてもいるのです。合成洗剤に限らず、調味料である塩であっても、摂りすぎると人体に害をおよぼします。

つまり、なんでも使いすぎれば、何かしらのリスクはあるということです。大切なのは、合成洗剤と石鹸のどちらか一方を危険だと決めつけて使用しないのではなく、どちらも使用する量をなるべく控えること。どちらも使いすぎないことで、環境にも人にもやさしくなれるのです。

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この記事を書いた人

2児の子育て奮闘中の30代ママライター。小さな頃から母親と祖母に、「もったいない教育」をされてきたせいか、物もお金も「もったいない」と思う節約体質になりました。そんな節約体質ならではの情報や、女性、子どもに関連する楽しいお役立ち情報をお届けいたします!

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