小学生の自由研究のテーマ選びに、毎年頭をかかえてはいませんか?高学年になってくると「これでは簡単すぎる?」と思えて、なかなか学年に合ったレベルのテーマを選ぶのが難しいですよね。
ここでは、環境問題について発信するエコトピアならではの自由研究テーマをご紹介します。環境問題の一つになっている「酸性雨」について学べ、しかも色が変化する楽しい化学実験を紫キャベツの色素を使っておこないます。
実際にわたしが、小学生の娘とおこなった手順や結果を写真付きでご紹介しますので、簡単にチャレンジできますよ!
目次
自由研究テーマ「紫キャベツの色素で酸性雨を調査!環境問題を考える」
研究内容の説明をする前に、以下の3つのポイントについて簡単に説明していきます。
- 酸性雨とは何なのか
- 酸性雨の何が問題なのか
- 紫キャベツの色素で酸性雨を調べるしくみ
酸性雨とは何なのか
酸性雨とは、酸性とアルカリ性の濃度を表すpH(ペーハー)が5.6以下の雨のこと。つまり酸性の性質が高い雨のことです。酸性とは物の性質の名前で、酸っぱいものに多い性質。酸性の反対の性質にはアルカリ性があり、苦い味のするものに多い性質です。
普通の雨も二酸化炭素が溶けているので、水道水より少し酸性の性質が高いのですが、酸性雨はより高い酸性の性質をもっています。それではなぜ、酸性雨は酸性の性質が高いのでしょうか。
火山活動などの自然活動や、車や工場の排気ガスなどの人間の活動によって、二酸化硫黄(SO2)や窒素酸化物(NOx)という物質が、空気中に排出されます。二酸化硫黄(SO2)や窒素酸化物(NOx)は上空へ昇っていくと、太陽の光によって硫酸や硝酸という酸性の性質が高い物質に変化するのです。
硫酸や硝酸が上空で雨に溶け込み、酸性の性質が高い「酸性雨」となります。
酸性雨の何が問題なのか
酸性雨は以下のような影響を与えることで、環境問題の一つとなっています。
- 草や木を枯らす
- 川や湖、沼が生き物の住めない環境なる
- 鉄や銅などの金属を錆びさせる
- 建物や文化財のコンクリートを溶かす
日本では1890年以降におきた「足尾銅山鉱毒事件」が、酸性雨による被害の例として有名です。胴を製錬する工場から排出されたガスが原因で、酸性の性質が非常に高い酸性雨が降りそそぎました。工場周辺の森林は、工場から排出されたガスや酸性雨によって枯れ果て、禿山になってしまったのです。
紫キャベツで酸性雨を調べるしくみ
ご紹介する自由研究テーマでは、紫キャベツで酸性雨を調べます。どのようなしくみで酸性雨を調べるのか、簡単に理解しておきましょう。
紫キャベツには、アントシアニンという紫色の色素があります。アントシアニンは混ぜたものの性質によって、色が変化するのです。以下の図のようにアントシアニンは、酸性の性質が高いものに混ぜると「赤色」に、アルカリ性の性質が高いものでは「緑色」や「黄色」に変化するのです。 どちらの性質でもない中性のものに混ぜても色は変化せず、「紫色」のままとなります。
アントシアニンの色の変化
今回の自由研究は、紫キャベツのアントシアニンの色の変化を観察することで、雨水の酸性の性質が日によって変化するのかを調べる内容です。
参考:気象庁 酸性雨に関する基礎的な知識
参考:山形大学環境保全センター 酸性雨による被害
研究の方法
研究に必要なものや方法について、見ていきましょう。
用意するもの
研究に必要なものは、以下のものになります。
- 紫キャベツの葉 2~3枚
- 蓋つきのミニペットボトル 6本 (比較サンプル用:4本、雨水用2本)
- 水道水
- ミネラルウォーター 500ml
- 雨水 50mlほどを2日分
- 鍋
- 2Lのペットボトル
- コーヒーフィルター
- クエン酸(または酢) ティースプーン1杯
- 洗濯洗剤 ティースプーン1杯
手順
わたしが実際に試してみた手順をご紹介します。
- 雨の日に外へバケツを置き、雨水をためる
※採る日や時間帯を変えてみると、比べる面白さがあります。 - ためた雨水を蓋つきミニペットボトルの3分の1量まで入れ、採った日時や場所をマジックで記入する(今回は2日に分けて雨水を採りました)
※雨水の量は同じくらいの量にそろえましょう。 - 紫キャベツの葉を千切りにして鍋に入れ、400mlのミネラルウォーターを入れる
- 鍋を沸騰させないように火にかけ、紫キャベツの葉の色が薄くなるまで紫色を抽出する
- 4を冷ましたあと、2Lペットボトルを半分に割って上部を逆さ向きに置き、コーヒーフィルターをセットする
- 4の紫色の抽出液をオタマですくい、5のペットボトル上部に注ぐ
紫キャベツの煮汁のろ過
- ペットボトルの下部に落ちた紫色の抽出物を指示薬として保存しておく
- 蓋つきペットボトルの3分の1量の液体を「ミネラルウォーター」「水道水」「ミネラルウォーター + クエン酸」「ミネラルウォーター + 洗濯洗剤」の組み合わせで比較用サンプルを用意する
- 雨水と比較用サンプルそれぞれに、7の指示薬をペットボトルのフタ2杯分ずつ入れ、蓋をして軽く振り混ぜる
- 各サンプルの色の違いを比較する
クエン酸には酸性、洗濯洗剤にはアルカリ性の性質があります。雨水の色と比較するために、用意しましょう。
紫キャベツ以外にも、ブドウの皮や朝顔の花などで指示薬をつくるのもいいですね。紫キャベツとは違う色の変化を観察できて、おもしろいですよ。
結果からわかったこと、まとめ方
ここからは、わたしが娘と実験をおこなった結果と、結果からわかったこと、自由研究のまとめ方をお伝えします。
結果からわかったこと
「クエン酸、雨水①、雨水②、水道水、ミネラルウォーター、洗濯洗剤」の6つのサンプルに、紫キャベツの色素の指示薬を混ぜた結果、以下のような色に変化しました。
6つのサンプルの色の変化
写真では少々わかりづらいですが、雨水①のサンプルは赤紫色で、雨水②のサンプルは水道水に近い紫色でした。 雨は降った日によって、酸性の性質の高さが異なることがわかりました。
二つの雨水サンプルの色が異なるのは、日によって排気ガスの量が違うことが関係していると考えられます。雨水①のサンプルを採った日は、雨水②のサンプルを採った日より、排気ガスの量が多かったのかもしれませんね。
雨水を採る日や時間(朝、昼、夜など)、場所などを変えると、微妙な色の変化を比べるのが楽しくなりますよ。
参考:日本ガイシ NGKサイエンスサイト
まとめ方
以下の内容を紙に書いて、まとめれば自由研究の完成です。
- 研究しようとおもったきっかけ
- 酸性雨とは何なのか簡単な説明
- 結果の予想
- 研究に使った材料と手順
- 研究の結果
- 研究の結果からわかったことや感想
- 参考にした本やWebサイト
研究は、予想したことと結果の違いについて考えることが大切です。本やWebサイトなどで調べて、自分なりの考えをまとめてみましょう。
自由研究で身近な環境問題について考えよう
雨にも環境問題が隠されているとは、子どもたちにとっては驚きの発見になるのではないでしょうか。自由研究に面倒なイメージをもっている子どもも、色が変化する実験はわくわくするかもしれません。ご紹介した自由研究で、身近な環境問題についてお子さんと考える機会をつくってみましょう。
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