あなたのお子さんは、給食を残さずに食べられていますか?わたしの娘は時間内に食べきれず、残してしまうようです…。
私の娘のように給食を時間内に食べきれなかったり、嫌いなものが多くて残してしまったりする子どもは多いようですね。この残された給食のように、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品を「食品ロス」と言います。
給食の食品ロスは、年間で児童一人あたり約17kgともいわれ、日本の食品ロスの大きな問題の一つとなっています。
そこで今回は、以下の3つのポイントから、給食の食品ロスについて考えます。
- 給食の「食べ残し」はなぜおきるのか
- 給食の完食を無理強いすべきでない理由
- 給食の食品ロスを削減するための学校での取組み事例
この機会に、子どもが給食を食べ残す本当の理由を知り、対策を考えてみましょう!
目次
給食の食品ロスの原因「食べ残し」はなぜおこるのか
それではまず、なぜ給食は残されてしまうのか、その理由について掘り下げていきたいとおもいます。
子どもが給食を食べ残す理由の上位トップ3
2011年に独立行政法人日本スポーツ振興センターが発行した「児童生徒の食事状況等調査報告書」によると、小・中学生が給食を食べ残す理由の上位トップ3は、以下のようになっています。
- 嫌いな食べものがあるから
- 量が多すぎて食べられない
- 給食を食べる時間が短い
「嫌いな食べものがあるから」と答えた子どもは61%以上となり、次に多い「量が多すぎる」「時間が短い」と答えた子どもは女子に多いことがわかりました。
参考:日本スポーツ振興センター 平成22年度 児童生徒の食事状況等調査報告書【食生活編】
食べ残す理由別に隠された本当の悩みとは
食べ残す理由のなかには、子どもなりの様々な悩みがあります。上でご紹介した理由に対しての悩みを順番に解説していきます。
「野菜料理」と「魚料理」が嫌いな子どもが多い
独立行政法人日本スポーツ振興センターは、子どもの嫌いなメニューについても調査しており、トップ3は「野菜料理」「サラダ」「魚料理」でした。
野菜料理はダントツの85%、魚料理は46%とかなり多かったのに対し、「肉」や「揚げ物」を嫌いと答える子どもは7%以下と低いことがわかりました。
現代の子どもは、昔の子どもと比べて洋食を食べ慣れてきているため、野菜や魚を苦手とする子どもは増えてきているようです。現代の子どもの好みに応じたメニュー作りも、必要なのかもしれません。
子どもによって食べられる量は違う
わたしの娘は、とても小食なため、給食をはじめから半分に減らして食べています。たくさん食べる子どももいれば、食べられない子もいる。大人でも小食の人は、普通といわれている量を食べるのはキツイものがあります。
それなのに、小食の子どもにとって、普通の量を完食することは本当にストレスの多いことでしょう。 「給食の量が多い」と感じる子どもが多いということは、個人にあった給食の量の調整が必要であることを意味しているのではないでしょうか。
給食を食べる時間の平均は15分~20分と意外に短い
以前、「横浜市の中学校の給食時間は15分しかない」というツイートが問題になりました。しかし横浜市に限らず、小・中学校での給食時間は15~20分が多いようです。
昼休み自体は45分あるのですが、給食の準備や片づけ、次の授業の準備などに時間を費やし、給食を食べられる時間は短くなるようです。
大人でもこの時間の長さでは、ゆっくり食べられない人もいるでしょう。子どもたちがこの時間の長さで、よく噛んで食べられているのか、疑問に感じます。食べる時間の短さは、食べ残しに関係しているのではないでしょうか。
無理に完食させてまで給食の食品ロスを削減する必要はない
給食の食品ロスを削減するために、子どもたちに完食を促す学校の先生は多いでしょう。ここでは、「そもそもの給食の目的」や「無理に給食を完食させることによる、子どもへの影響」について解説します。
そもそも給食の役割とは
給食には、「学校給食法第2条」によって、以下のような7つの目的が設定されています。
第二条 学校給食を実施するに当たっては、義務教育諸学校における教育の目的を実現するために、 次に掲げる目標が達成されるよう努めなければならない。
- 適切な栄養の摂取による健康の保持増進を図ること。
- 日常生活における食事について正しい理解を深め、健全な食生活を営むことができる判断力を 培い、及び望ましい食習慣を養うこと。
- 学校生活を豊かにし、明るい社交性及び協同の精神を養うこと。
- 食生活が自然の恩恵の上に成り立つものであることについての理解を深め、生命及び自然を尊 重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。
- 食生活が食にかかわる人々の様々な活動に支えられていることについての理解を深め、勤労を 重んずる態度を養うこと。
- 我が国や各地域の優れた伝統的な食文化についての理解を深めること。
- 食料の生産、流通及び消費について、正しい理解に導くこと。
出典元:電子政府の総合窓口e-Gov 学校給食法
簡単に言いかえると、以下のとおりになります。
- 栄養を摂って健康になる
- 正しい食事習慣を身につける
- 学校を楽しい場にする
- 食事に感謝する
- 食事は様々な人の活動によって得られることを知る
- 日本の食文化を知る
- 食事になるまでの流通過程を知る
つまり、給食は栄養を摂るだけでなく、食事に感謝することや、楽しく食べることも大切ということです。無理して完食させるということは、この目的に沿わない行動なのではないでしょうか。
先生たちも給食指導の方法がわからずに無理強いしてしまう
学校給食法が定義する給食の目的には、「食事に感謝すること」「楽しく食べること」も含まれていますが、なぜ完食を無理強いしてしまう先生がいるのでしょうか。
先生たちは日々様々な研修を受けています。しかし給食の栄養に関する知識や、完食が大切という食育の研修は受けていても、その子に合った給食の指導方法については学ぶ機会が少ないのです。
いくら先生であっても、指導方法を知る機会がなければ、適切な指導はできないのは当然ですね。その結果、完食ばかりを重要視してしまい、無理強いしてしまうのではないでしょうか。
給食がストレスで不登校に
2017年に岐阜県の小学校で、50代の教諭が完食を無理強いした結果、5人の生徒が嘔吐したというニュースがありました。
こうした完食の無理強いによって、給食の時間をストレスに感じてしまう子どもも多いようです。 「給食を完食しなければ、先生や友だちに何か言われてしまう」というストレスから、心と体に不調を感じるようになり、不登校になる子どももいるのです。
給食の食品ロスを削減するための対策
子どもに完食を無理強いせずに、給食の食品ロスを削減する方法はあるのでしょうか。ここでは、実際に学校でおこなわれている食品ロスの削減対策方法とともに、子どもたちの給食の食べ残しを、少しでも削減するためのポイントをお伝えします!
子どもに量を決めさせる
東京都世田谷区にある「さくらしんまち保育園」は、給食の食べ残しがほぼない保育園として有名です。この保育園では給食をビュッフェ形式にし、自分で食べられる量を決めさせています。
自分で量を決めることによって、子どもたちに満足感と責任感が生まれ、食べきろうという気持ちが自然に生まれるのだとか。
昨今の小中学校ではビュッフェ形式は手間もかかるので、全員の配膳が終わったあとに、食べられる量だけ先生が減らしてあげるシステムを取り入れているところが多いようです。
参考:さくらしんまち保育園 給食のさくらしんまち保育園
給食を食べる時間を長くする
東京都足立区の公立の小・中学校では、平成20年の1月26日から30日の5日間、給食を食べる時間を5分延長する取組みを実施しました。
前年に食べ残した割合と正確に比較するために、前年とまったく同じ献立で実施したそうです。その結果、小学校では平均3%、中学校では平均4%、食べ残した割合が減少したという結果に。
やはり給食を食べる時間の短さは、食べ残す割合を高めるようです。全国の小・中学校の給食を食べる時間は、15~20分ほどといわれていますが、5分延長するだけも給食の食品ロスを減らせる可能性があります。
参考:足立区公式ホームページ おいしい給食 平成20年度の取り組み
食材が給食になるまでを見学し、命の大切さを学ぶ
大阪府東大阪市が2018年に12校(約5007人)で行った調査によると、1週間で飲み残された給食の牛乳の量は、牛乳(200ml)706本分であることがわかりました。わたしの娘の学校でも牛乳の飲み残しの多さは、問題となっています。
参考:東大阪市 学校給食残量調査の結果
ある東京都内で行われた食育の授業では、栄養士が牛を一頭連れてきて、子どもに搾乳体験をさせたり、牛乳は牛の血からつくられていることを説明したりしたそうです。
その結果、牛乳の飲み残しはほとんどなくなったとのこと。このように 食材が給食になるまでの過程に興味をもたせ、命の大切さを学ばせることは、食品ロスの削減に有効といえます。
給食の食品ロスを削減するために、まずは家庭の食育を見直そう
給食の食品ロスを削減するためには、子どもに完食を無理強いせず、自然と食べ残させない工夫が必要です。
今回ご紹介した学校や保育園での取組みを、学校ですぐに実施することは難しいですが、まずはあなたのご家庭で取組んでみませんか?
「食材が食卓にのぼるまでの過程を伝える」など、家庭での食育を見直すことで、子どもの給食への意識を変えられ、給食の食品ロス削減に貢献できるかもしれません。
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