ペットボトルはリサイクルの優等生と言われています。それは、廃棄されたペットボトルがペットボトルに再生されて戻ったり、衣類になったり、高度なリサイクルがされているからです。しかし、プラスチックの固まりともいえるペットボトルは年々増え続けていますが、なぜ、こんな増え続けるのか。環境に悪影響はないのか。飲料メーカーはどう取り組んでいるのか探ってみました。
ジャーナリスト 杉本裕明
ペットボトルはどの程度造られているのですか?
業界団体のPETボトルリサイクル推進協議会によると、ペットボトルの2017年の生産量は227億本にのぼります。これは2004年の1・54倍。燃やしてCO2が発生すると仮定すると排出量は216万7000トン。04年に比べて1・04倍にとどまっています。
本数が大幅に増えているのにCO2が横ばいなのは、肉厚を薄くして軽量化したからです。協議会によると、水用の2リットルのペットボトルは各社平均で36グラムの重さですが、2000年には57グラムでした。耐熱用の2リットルのペットボトルも67グラムから58グラムに軽くなっています。
ペットボトルは1967年に米国デュポン社が基礎技術を開発したことに始まります。日本では1977年にしょうゆ(醤油)を入れる500ミリリットルの容器に使われたのが最初です。82年に食品衛生法で国から飲料容器として認められました。当初、国は500ミリリットル以下のペットボトルは「ごみを増やす」と認めていなかったのですが、欧米から貿易の障害だと批判され、96年に輸入の解禁に踏みきり、爆発的に増えることになりました。
参考:PETボトルリサイクル推進協議会 PETボトルの軽量化|統計データ
ペットボトルはなぜ、リサイクルの優等生と呼ばれているのですか?
家庭から排出された廃ペットボトルは容器包装リサイクル法のもとで市区町村が回収し、飲料メーカーなどでつくる日本容器包装リサイクル協会を通し、リサイクル業者に渡されます。業者は粉砕してペレットなどにした後、ペットボトルやシート、繊維などに生まれかわります。リサイクルに回る回収率は8割と高く、また確実にリサイクルされることから「優等生」と呼ばれているのです。
しかし、その一方、自動販売機やスーパー、コンビニ、病院など、家庭以外から排出された廃ペットボトル(事業系ペットボトルと呼ばれます)も大量にあります。これはリサイクル法の対象外で、これまでは中国に破砕した廃ペットボトルを年間25万トン以上も輸出していました。
日本国内でリサイクルしてこなかったのは、中国が高い値段で買ってくれることと、市区町村がやっているようにキャップやラベルを取り、きれいに洗ってリサイクル業者に渡したのでは費用がかかりすぎるためです。自動販売機で販売し、回収された廃ペットボトルは飲み残しがあったり、キャップやラベルがついたままで、汚いペットボトルと呼ばれています。
ところが2017年に中国が廃ペットボトルの輸入禁止を打ち出し、状況は一変しました。困った業者は東南アジアへの輸出に切り替えましたが、すべてを引き受けるだけの余裕はなく、大量のペットボトルが日本国内に滞留し、燃やされたり、埋め立てられたりしています。
植物由来のバイオマスプラスチックを使ったペットボトルが登場すると聞きました
サントリーは、リサイクル業者と共同で、リサイクル法のもとで集めた廃ペットボトルからペットボトルを再生する取り組みを進めていましたが、今回、2030年までにこの割合を6~7割に高め、残りの3~4割を植物由来のバイオマスプラスチックで造る方針を決めました。19年春に植物由来原料のキャップを導入するとしています。
コカコーラ社も2030年までに容器の原料をリサイクル材で造るとの目標を掲げています。ただ、バイオマスプラスチックの値段はプラスチックの2~3倍で、ペットボトルの料金に影響しないか心配な面もあります。
それでもバイオマスプラスチックは注目され、政府も2030年までに200万トン導入する目標を掲げています。燃やしても二酸化炭素を出さない利点がありますが、課題もあります。海洋汚染問題に詳しい高田重秀東京農工大学教授は、バイオマス原料への転換を評価しながらも、海洋汚染を防ぐためには、添加剤(性能維持のために様々な化学物質が使われている)を配合しないよう求めています。
また環境に優しいと言われる生分解プラスチック(微生物が分解するとされている)も、分解に時間がかかることから、「海洋汚染の唯一の解決策にはならない」(国連環境計画)とも指摘されてもいます。
ペットボトルの代わりはマイボトル?
先ほど述べたような技術開発は大切なことですが、227億本にものぼるペットボトルの使用量を見直すことも大切なことです。その一つがマイボトルです。冷たい飲料水をマイボトルに入れて持ち歩けば、ペットボトルに頼らなくてもすみます。しかし、飲んでしまえばそれっきり。再びペットボトルを購入ということになりかねません。
そこで注目されているのが、マイボトル給水器。
国際環境NGOのグリーンピースは、パリやロンドンでマイボトル給水器の設置が増えているとし、東京に30台の給水器を設置することを都に提案しています。半年間で100万本のペットボトルに相当すると試算しています。
都内にないのか、と探してみると、ありました。中央線吉祥寺駅に近い武蔵野市開発公社の通路にマイボトル給水器が備え付けられています。市民が訪れて、マイボトルに給水していました。
東京都武蔵野市内のビルに設置されたマイボトル給水器は人気があり、
毎日多くの市民が、マイボトルをもって訪れる
武蔵野市開発公社提供
公社の担当者に尋ねてみました。
「公社は市の外郭団体で、緑化などの環境事業に取り組んでいます。屋上には庭園もあります。マイボトル給水器は2012年に設置しました。この3月の1日平均で、500ミリリットルのペットボトル58本分の利用があります。夏になると100本分以上の利用があり、市民にも認知されています」
評判は上々で、吉祥寺の名所の一つになっているようです(住所は武蔵野市吉祥寺本町1の13の11 メアリヒト吉祥寺ビル7階)。
休憩もできるし、こんなスポットが各地にできればいいと思いました。
コメント